ファインチューニングとは?仕組みや導入手順を実践解説

  • 2026.09.04
       
【ファインチューニング】生成AIを目的に合わせてカスタマイズする

汎用的な生成AIだけでは、自社の業務や求める回答形式にぴったり合わせるのが難しい場合もあります。
生成AIを、より自分の業務や目的に合った形で活用する方法の一つが、ファインチューニングです。

この記事では、ファインチューニングの仕組みや活用例、メリット・注意点に加えて、実際にファインチューニングを行う手順も解説します。
混同されやすいRAGとの違いや使い分け方についても紹介するので、自社での活用を検討する際の参考にしてみてください。

目次

ファインチューニングとは

ファインチューニングとは、既に学習済みのAIモデルに対して追加の学習を行い、特定の目的や用途に合わせて調整する方法のことを言います。

例えば、文章を生成できるAIモデルを利用すると、さまざまな質問に幅広く回答することができますが、特定の業界で使われる専門的な表現や、企業独自の文章ルールまで常に同じように扱えるとは限りません。
そこで、目的に合ったデータを追加で学習させることにより、質問に対する回答の形式や、使用する表現などの傾向をモデルに身につけさせることができます。

これがファインチューニングの基本的な考え方です。

既存のAIモデルを目的に合わせて調整する方法

AIモデルを一から作成する場合、大量のデータや高性能なコンピューターなどが必要になります。
一方、ファインチューニングでは、既に基本的な知識や文章を扱う能力を身につけているAIモデルを土台として利用します。

モデルそのものを最初から学習させるのではなく、目的に関係するデータを追加して学習させることで、特定の用途に適したモデルを作成できます。
例えば、一般的な文章生成AIを次のような目的に合わせて調整することが可能です。

  • 自社の問い合わせ対応に適した回答を生成する
  • 特定の業界で使われる文章表現を扱いやすくする
  • 決まった形式で文章を作成する
  • 特定の分類作業を行いやすくする

ファインチューニングが必要とされる理由

回答形式の統一や特定表現の使用といった細かい要望を、質問の度にAIに指示を出すことで実現するのは手間がかかります。
また、指定するルールが複雑である場合に、期待した結果を安定して得ることが難しくなるケースもあります。

一方、ファインチューニングを利用すると、あらかじめ特定の目的に合わせたモデルを用意できるため、指示を簡潔にしたり、回答の傾向を揃えたりしやすくなります。
幅広い用途に対応する汎用的なAIモデルを、特定の業務や目的により適した形へ調整することが、ファインチューニングが必要とされる主な理由です。

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ファインチューニングの仕組み

ファインチューニングは、基本的に以下の流れで実行します。

学習用のデータを用意する

データを使ってモデルを追加学習する

学習後の性能を確認する

ファインチューニングの基本的な流れを示す3ステップ図解
学習データの準備から性能確認までの3ステップ

詳しい流れについて見ていきましょう。

学習させるデータを用意する

最初に、AIモデルへ追加で学習させるためのデータを準備します。
このデータの内容は、作成したいモデルの目的によって異なります。

例えば、特定の形式で回答するAIを作りたい場合は、「質問」と「理想的な回答」を組み合わせたデータを複数用意します。
文章の書き方を調整したい場合は、目的に合った文章の例を学習用データとして準備します。

この時に重要なのは、単にデータの量を増やすことではなく、実際にAIに行わせたい作業に近いデータを用意することです。
そのため、学習データは「AIにどのような回答をしてほしいか」を具体的に表したものとして考える必要があります。

データを使ってモデルを追加学習する

学習用データを準備したら、それを使用して既存のAIモデルに追加の学習を行います。

ファインチューニングでは、AIモデルが既に持っている基本的な能力を活用します。
その上で、新しく用意したデータから特定の回答方法や表現、作業のパターンなどを学習し、目的に合ったモデルへ調整していきます。

具体的な実行方法は、利用するAIサービスやモデルによって異なります。
初心者の場合は、まずファインチューニングに対応したサービスやツールを利用すると、複雑な環境構築を行わずに試しやすいでしょう。

学習したモデルの性能を確認する

ファインチューニングが完了したら、学習したモデルが期待どおりに動作するか確認します。
確認する際には、回答が正しいかだけでなく、目的に合った形式になっているか、文章表現が統一されているかなども確認することが重要です。

期待した結果が得られなかった場合は、学習データの内容を見直したり、データの量や学習方法を調整したりする必要があります。
結果を確認しながら改善を繰り返していくことで、目的に適したモデルに近づけていきます。

ファインチューニングを実際に行う方法

ここまでで基本的な流れを確認したところで、実際にファインチューニングを行う手順を見ていきましょう。先に手順をイメージしておくと、後述するメリットや注意点も理解しやすくなります。

使用するAIモデルを選ぶ

ファインチューニングでは、まずベースとなるAIモデルを選択します。
モデルにはそれぞれ得意な用途や対応している言語、必要な計算資源などの違いがあるため、ファインチューニングを行う目的に合わせてモデルを選ぶことが重要です。

また、モデル自体の大きさも確認する必要があります。
一般的にモデルが大きくなるほど高い性能が期待できる一方、ファインチューニングにはより多くのメモリや計算能力が必要になります。

個人で試す場合や学習環境に制約がある場合は、比較的小規模なモデルから始めるとよいでしょう

ファインチューニングに使用するAIモデルを選択するイメージ
目的や環境に合わせて、ベースとなるAIモデルを選択する

学習用のデータを準備する

次に、モデルに追加で学習させるデータを準備します。
ファインチューニングでは、単に大量の文章を用意するのではなく、「モデルにどのような回答をしてほしいのか」が分かるデータを用意することが重要です。

たとえば、質問に対して特定の形式で回答するモデルを作りたい場合は、次のように質問と回答をセットにしたデータを用意します。

例:
質問:Pythonとは何ですか?

回答:Pythonは、さまざまな用途に利用されているプログラミング言語です。

このようなデータを複数用意し、モデルに追加学習させます。
データを作成するときは、実際にモデルへ入力する質問と、期待する回答の組み合わせをできるだけ統一することがポイントです。

質問と理想的な回答をペアにした学習データのイメージ図
ファインチューニングでは、このような質問・回答のセットを複数用意します

ファインチューニングを実行する

学習データを準備したら、ファインチューニングを実行します。
実際の処理では、Pythonなどのプログラミング言語と、AIモデルを扱うためのライブラリを使用する方法が一般的です。

Hugging FaceのTransformersTRLPEFTなどのライブラリを組み合わせることで、既存モデルに対する追加学習を実行できます。
また、モデル全体をそのまま学習し直すのではなく、LoRA(Low-Rank Adaptation)などの手法を利用して、学習する部分を限定する方法もあります。

モデル全体を学習する方法とLoRAの違いを示す比較図
パラメータを全体更新するフルファインチューニングと、一部のみ調整するLoRAの違い

実際にファインチューニングを行う際は、使用するモデルやライブラリ、GPUなどの環境に応じた設定が必要です。
使用するモデルやライブラリの公式ドキュメントを確認し、環境に合った方法で実行するようにしましょう

ライブラリを使ってファインチューニングを実行する処理のイメージ
Transformers・TRL・PEFTなどのライブラリを使ってファインチューニングを実行する

学習前後の結果を比較する

ファインチューニングが完了したら、学習したモデルに質問を入力して、学習前のモデルと結果を比較します。
同じ質問を学習前と学習後のモデルに入力し、回答の形式や表現に変化があるかなどを確認します。

ただし、ファインチューニングを行えば必ず期待した結果になるとは限りません。
学習データの品質や量、学習回数、学習率などの設定によって結果は変化するため、一度の学習結果だけで判断するのではなく、複数の質問を使って回答を確認することが重要です。

ファインチューニングの活用例

特定の業界や業務に合わせて活用する

業界や業務によっては、一般的な言葉とは異なる専門用語や独自の表現が使用されることがあります。
そのような分野でAIを活用する場合、実際の業務に近いデータを使ってファインチューニングを行うことで、目的に合った回答を得やすくなります。

ただし、社内資料や顧客情報などを学習データとして使用する場合は、情報の取り扱いに注意が必要です。

文章表現や回答スタイルを調整する

ファインチューニングは、AIが生成する文章の表現や回答のスタイルを調整したい場合にも活用できます。
通常のAIモデルでも、プロンプトと呼ばれる指示文を入力することで回答のスタイルを指定できますが、同じ形式の文章を繰り返し作成する場合には、ファインチューニングによってモデル自体の回答傾向を調整する方法も選択肢の一つです。

特に、一定のルールに沿った文章を継続的に生成したい場合には、回答形式を統一しやすくなる可能性があります

分類や要約など特定のタスクに活用する

ファインチューニングは、文章を生成する用途だけに限られません。
内容に応じて情報を分類したり、一定のルールに沿って文章を要約したりする作業にも活用できます。

ただし、単純な指示だけで十分に対応できる場合や、最新情報を参照する必要がある場合などは、別の方法が適していることもあります。
そのため、まずはAIをどのような目的で利用したいのかを整理した上で、ファインチューニングが必要か判断することが重要です。

ファインチューニングのメリット

目的に合わせてモデルを調整できる

ファインチューニングの最大のメリットは、汎用的なAIモデルを特定の目的に合わせて調整できることです。
実際に行わせたい作業に近いデータを使ってファインチューニングを行うことで、特定の用途に適した回答や処理を行いやすくなります。

例えば、決まった手順で文章を作成する業務や、一定の基準に沿って情報を分類する業務などでは、その目的に合ったデータを学習させることで、AIをより使いやすい形に調整できる可能性があります。

回答の形式や表現を統一しやすい

AIを業務で利用する場合、回答内容だけでなく、文章の形式や表現を統一したいケースもあります。
細かいルールを毎回プロンプトで指定することも可能ですが、利用するたびに指示を繰り返す必要があり、指示が複雑になるほど管理の手間も増えてしまいます。

ファインチューニングでは、目的に合った回答例を学習データとして使用することで、特定の形式や表現に沿った回答を得やすくなります。
完全に同じ形式の回答が常に生成されるとは限りませんが、AIの出力傾向を目的に近づけられることはメリットの一つです。

既存モデルを活用して学習の負担を抑えられる

AIモデルを一から開発するには、大量の学習データや高性能なコンピューター、長い学習時間などが必要になるため、独自に作成することは容易ではありません。

一方、ファインチューニングでは、すでに基本的な能力を身につけているモデルを土台として使用します。
そのため、一から学習を行う場合と比べて、必要となるデータや計算処理などの負担を抑えやすい傾向にあります。

また、近年では、比較的小さなモデルや効率的に追加学習を行うための技術も利用されるようになり、以前よりもファインチューニングに取り組みやすい環境が整いつつあります。

ファインチューニングの注意点・デメリット

学習データの品質によって結果が変わる

ファインチューニングでは、学習に使用するデータの内容が結果に大きく影響します。
AIに身につけさせたい内容と関係のないデータや、誤りを含むデータを使用すると、期待とは異なる回答をする可能性があります。

そのため、データを準備する際には、内容が正確か、目的に合っているか、形式にばらつきがないかなどを確認することが重要です。
大量のデータを用意することだけを優先するのではなく、AIにどのような結果を出してほしいのかを意識して、適切なデータを選ぶ必要があります。

学習には一定のコストや環境が必要になる

ファインチューニングを行うには、モデルを学習させるための計算処理が必要です。
そのため、利用する方法によっては、コンピューターの性能やクラウドサービスの利用料金などのコストが発生します

データ量やモデルの種類、学習回数などによって必要なコストは変わるため、実際に利用する際には、事前に料金体系や必要な環境を確認しておくことが大切です。
また、学習データの準備にも時間がかかる場合があるため、学習そのものだけでなく準備にかかる手間も考慮する必要があります。

学習のさせ方によって性能が低下する場合がある

ファインチューニングを行えば、必ずAIの性能が向上するわけではありません。
学習データや方法が適切でない場合には、かえって回答の品質が低下することもあります。

このような問題を防ぐためには、学習後のモデルだけを確認するのではなく、ファインチューニング前のモデルと結果を比較することが重要です。
複数の質問やデータを使用し、目的とする作業での動作は改善されているか、それ以外の性能に大きな影響が出ていないかなどを確認することで、問題を早めに見つけやすくなります。

ファインチューニングとRAGの違い

ファインチューニングと同様、AIを特定の用途に合わせて活用する方法の1つに、RAGがあります。
どちらもAIの回答を目的に合わせるための方法ですが、仕組みや得意とする用途には違いがあります。

モデル自体を調整するか外部情報を活用するか

ファインチューニングは、既存のAIモデルに追加の学習を行い、モデル自体を目的に合わせて調整する方法です。
学習用データを使って、特定の回答方法や表現、作業の傾向などを身につけさせます。

一方、RAGは、AIモデルそのものを追加で学習させるのではなく、必要な情報を外部のデータから検索し、その情報を参考に回答を生成する仕組みです。
対象とするデータをあらかじめ検索可能な状態にしておき、質問に関連する情報をその中から探してAIに渡すことで、一般的な生成AIが持たない知識にも対応することができます。

ファインチューニングは「AIの回答の仕方そのものを目的に合わせて調整する方法」、RAGは「必要な情報を探してAIに渡す方法」と捉えると違いを理解しやすいでしょう。

ファインチューニングとRAGの違いを示す比較図
モデル自体を調整するファインチューニングと、外部情報を検索して回答に活かすRAGの違い

ファインチューニングとRAGが向いている用途

ファインチューニングは、特定の文章表現や回答形式を身につけさせたい場合や、決まった基準で分類・処理を行わせたい場合などに向いています。

一方、RAGは、最新の情報や頻繁に更新される情報をAIに参照させたい場合に適しています。
モデルを再学習する必要がなく、参照するデータを更新することで対応できるため、情報を回答に反映するためのコストが少なく済む点が特徴です。

ファインチューニングとRAGの使い分け

ファインチューニングとRAGは、目的に応じて使い分けることが重要です。

例えば、AIに最新情報を回答させたい場合、ファインチューニングでは情報が更新されるたびに再学習が必要になる可能性があるため、外部データを参照できるRAGの方が適しています。
一方で、回答の文章形式や処理方法を安定させたい場合は、必要に応じてファインチューニングを活用することが考えられます。

また、両方の方法を組み合わせて利用することも可能です。
ファインチューニングとRAGは競合する仕組みではなく、それぞれ異なる役割を持つ技術のため、目的に合った方法を選ぶことが大切です。

まとめ

ファインチューニングは、特定の目的や用途に合わせて学習済みのAIモデルを調整する方法です。
AIを利用する全ての場面で必要になるわけではないため、まずはプロンプトによる指示だけで目的を達成できるかを確認し、それでも回答形式や特定の作業への対応を安定させる必要がある場合に、ファインチューニングを検討するとよいでしょう。

     

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