ITの資格試験は技術者向けで、事務職や営業職には無縁の資格だと考える人も多いのではないでしょうか。
しかし、昨今では私たちの生活やビジネスの現場においてITは切り離せない存在になっています。
AIやビッグデータといった新しい技術も登場し、多くのサービスや製品が生まれています。
このように、今では必要不可欠となったITに関する基礎知識を習得していることを証明できる国家資格です。
ITエンジニアを目指したいと考える初心者にとっても、資格の勉強を通じて情報処理を基礎から学べる ITパスポートは最適といえます。
本記事ではITパスポートについて基礎から解説します。
ITパスポート試験とは?
ITパスポート試験とは、経済産業省認定の国家資格で、ITを利活用する社会人に必要とされる基礎的な知識を有することを証明する資格です。同試験は経済産業省所管の独立行政法人「IPA(情報処理推進機構)」によって実施されており、12種類ある情報処理系技術者試験のうち最も簡単なエントリーレベルの国家資格であり、ITを利活用する人であればだれでも取っておきたい資格です。
引用元:情報処理技術者試験 試験要綱
ITパスポートは、ITエンジニアだけでなくITを利活用する誰もが情報処理に関する正しい知識を持つべきだという認識が広まったことで2009年4月に発足しました。そんな比較的新しい資格ですが、IT業界以外のさまざまな業界や場面でもITの知識が必要になってきた昨今では受験者が増え、2019年には累計受験者数が100万人を突破するなど、人気の高い資格になっています。
ITパスポートは情報処理の分野における入門編といった立ち位置であるのに加え、参考書や学習サイトが充実しているので、独学でも十分に合格を狙える資格です。
情報処理系技術者試験
「情報処理の促進に関する法律」に基づいて経済産業大臣が実施する、情報処理に関する知識や技能を問う国家試験。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
日本の IT 施策の一端を担う政策実施機関。所管官庁は経済産業省。
ITパスポート試験の難易度は?
ほかの基本情報技術者試験や応用情報技術者試験などの資格に比べて難易度が低いです。
2022年4月~10月に実施された試験の合格率は53.4%でした。同じ情報処理系技術者試験である基本情報技術者試験の同年5月に実施された試験の合格率は38.3%であることからも、ほかの試験に比べてかなり高いといえます。
全体としてはそのような割合になりましたが、内訳をみると社会人の合格率は60.6%、学生の合格率は 42.5%となっており、社会人の合格率の方が高いのがわかります。これは、ITに関する知識だけでなく、ビジネス用語や経営に関する問題も出題されるため、実務経験のある社会人が有利だからです。そのため、学生は、ビジネス分野を重点的に学習することで合格の可能性が上がるでしょう。
引用元:ITパスポート試験結果
ITパスポート試験の合格率は?
令和5年度の統計を以下に示します。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 年度合計 | |
受験者数 | 16,346名 | 15,130名 | 16,546名 | 19,798名 | 18,845名 | 22,177名 | 19,333名 | 18,325名 | 146,500名 |
合格者数 | 8,347名 | 8,227名 | 8,882名 | 9,932名 | 9,364名 | 10,935名 | 10,385名 | 9572名 | 75,644名 |
合格率 | 51.1% | 54.4% | 53.7% | 50.2% | 49.7% | 49.3% | 53.7% | 52.2% | 51.6% |
ITパスポートの取得をおすすめする理由
比較的難易度が低い
ほかの基本情報技術者試験や応用情報技術者試験などの資格に比べて難易度が低く、比較的取得しやすい資格であるといえます。
ITの基礎知識を身につけられる
試験勉強を通して幅広い分野の基礎知識を総合的に習得できます。
ITパスポートはITエンジニアがスキルアップのために受ける試験というより、ITに関わるすべての人に向けて基礎知識を問う試験であると説明しましたが、出題される問題もセキュリティやネットワークに関する設問やAIやビッグデータ、IoTなどの最新技術に関する知識を問う設問のほか、マーケティングや財務、法務といった経営全般の知識、セキュリティやネットワークに関する知識、マネジメントの知識など幅広い分野の知識を総合的に問われます。
このように情報処理に関する基礎知識を体系的に学ぶことで、たとえばクライアントや社内の情報システム部門と円滑にコミュニケーションをとれるようになるなど、ビジネスのさまざまな現場で活かせます。
就職で有利になる場合もある
ビジネスでもITの知識が重視され、あらゆる業界の多くの企業で IT に関する基礎知識を備えた人材を求めるようになってきました。そこでITパスポートが有効にはたらきます。
しかし、実は IT系職種やITエンジニアにとっては資格取得したところでそこまで意味をなしません。なぜなら、ITパスポートの内容はITエンジニアであれば知っていて当然だからです。しかし、言い換えればこれは、ITエンジニアになるなら知っておくべき内容が詰まっているということです。当然持っていて損はありませんし、ITエンジニアになりたいけどどこから始めるべきかわからないという人には最適の学習だといえます。
また、エンジニア以外の事務職や営業職の就職には有利に働く場合が多いです。
事務職や営業職でもPCやネットワークに触れる機会が増えています。そんななかで、IT の知識を持っておけば PC スキルの証明として役立つこともあるそうです。
また、IT とは縁遠い人でITに対する苦手意識がある場合でも IT の基礎の部分に触れることで苦手意識が軽減するきっかけにもなるでしょう。
ITパスポートの関連資格は?
初級システムアドミニストレータ試験(2009年に廃止)
ITパスポート試験について調べているとよく名前が上がる試験です。
この資格は ITパスポートの前身にあたる試験で、ITパスポートと基本情報技術者試験を融合したような試験でした。ただ、基本情報技術者試験と類似する要素が多かったため、ユーザ向けの部分をITパスポート試験として分離させ、その残りを基本情報技術者試験に統合させる形で廃止されました。
ITパスポート試験の概要
項目 | 内容 |
試験時間 | 120分 |
出題数 | 100問 |
出題形式 | 四肢択一式 |
試験方式 | CBT(Computer Based Testing)方式 |
出題分野 | ストラテジ系(経営全般):35問程度 マネジメント系(IT管理):20問程度 テクノロジ系(IT技術):45問程度 |
合格基準 | 総合評価点600点以上かつ各分野別評価点300点以上 総合評価点 600点以上/1,000点(総合評価の満点) 分野別評価点 ストラテジ系 300点以上/1,000点(分野別評価の満点) マネジメント系 300点以上/1,000点(分野別評価の満点) テクノロジ系 300点以上/1,000点(分野別評価の満点) |
採点方式 | IRT (Item Response Theory:項目応答理論) に基づいて解答結果から評価点を算出 |
受験料 | 7,500円(税込み) |
試験日 | 随時 |
試験時間と問題数
試験時間120分に対し、出題数は100問です。
記述式の設問はありませんが、計算問題があり、1つの問題に時間をかけすぎてしまうと最後まで解ききれない可能性が生じてしまうので注意しましょう。
出題形式と試験方式
ITパスポートはCBT(Computer Based Testing)方式といってコンピュータに問題が表示され、マウスやキーボードで操作して回答を入力していく試験方式を採用しています。四肢択一式で記述式の設問はありませんが、計算問題もあるため、時間配分には注意が必要です。
前提条件
前提条件は特にありません。年齢や国籍による制限もなく誰でも受けることができます。
2022年4月に7歳の合格者がでたと IPA から発表があり話題になりました。
https://www.ipa.go.jp/about/press/20220414_2.html?_fsi=AXYuPhQu
出題分野
出題分野は以下の表を参照してださい。
より詳しい出題分野に関しては下記リンクで確認できます。
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/range.html
出典:ITパスポート 試験内容・出題範囲
ストラテジ系とは
経営の基本から法務、また、経営戦略やマーケティングといった経営全体について問われる分野で35問ほど出題されます。著作権や個人情報保護といった法務に関する設問も多いため、関連用語などを重点的に覚えるようにしましょう。
マネジメント系とは
プロジェクトマネジメントやサービスマネジメントといったIT管理に関する問題でマネジメント系からは20問ほど出題されます。システム開発の手法や流れ、プロジェクトの管理、システム監査の流れなど手をおさえておきましょう。
テクノロジ系とは
ITの基礎となる 2 進数などの基礎理論からコンピュータの構成、アルゴリズム、セキュリティ、ネットワーク、データベース、セキュリティまでIT技術に関する問題が45問ほど出題されます。
合格基準と採点方式
1000点満点中600点以上で合格となります。
ただし3つの分野でそれぞれ3割以上取得していることが条件となります。
受験料と決済方法
受験料は、2022年11月現在では7,500円(税込み)でクレジットカードやコンビニ、バウチャーチケットでの支払いが可能です。
試験日と試験会場
ITパスポート試験はほかの情報処理技術者試験とは違い、全都道府県で毎月実施されているため、自分にとって都合のいい場所やタイミングで受験できます。
試験日はテストセンターごとに違いますが、年間を通して、隔週、多いところでは週に1回ほど開催されており、試験日の3か月前から前日まで申し込みを受け付けています。
試験会場は下記から参照してください。
【試験実施会場一覧】
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/excel/kaijyo.pdf
受験申し込み方法
CBT方式を採用する ITパスポート試験の申し込み方法は、ほかの情報処理技術者試験と異なります。
① 利用者IDを登録する
利用者ID登録ページ
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/examination/user_use_regulation.html
② 登録したIDでログインし、メニューから「受験申込」を選択する
③ 希望の試験会場、試験日程を選択する
④ 決済方法を選択し、申し込む
受験当日はメールで送付された確認票を印刷したものか受験番号、利用者ID、確認コードの控えを持参します。
受験当日の流れと注意点
試験開始の30分前から受付がはじまります。
直前になると混み合う可能性もあるため、余裕をもって会場に向かいましょう。
受付では、確認票と顔写真付き本人確認書類を提示します。
※公的証明でかつ有効期限内のもの (コピー不可)
受付を終えたら受験用のPCに受験番号、利用者ID、確認コードを入力しログインします。
結果発表と合格証書
結果は当日から登録したIDでログインして確認できます。また、翌々月の月初に正式な合格発表が掲載されます。
合格証書はこの合格発表から約1週間後の到着になります。
ITパスポート取得に必要な勉強時間
取得にかかる時間はその人が普段からどの程度PCに触れているかによって異なります。
初学者の場合
一般的には、初学者が合格までにかかる勉強時間は約180時間といわれています。1日2時間の勉強だと3か月ほどで合格を目指せます。略語や英語、カタカナ語が多く出てくるIT用語を理解するのは簡単ではありません。わからない箇所はその都度調べて1つ1つ丁寧に用語を覚えていくことが重要です。
情報系の勉強経験がある場合
情報系の学生やIT系企業の従事者など情報処理に関する基礎知識がある人は約100~150時間の学習で合格を目指せるといわれています。
まず、試験範囲を見て知らない分野がないかをチェックしましょう。用語を知らなければ答えようがない問題も多く存在するので注意が必要です。
ITパスポート試験の過去問
ITパスポート試験の過去問は公式で公開されています。
模擬試験を体験しよう
本試験の模擬試験を体験できるソフトウェアが、公式から公開されています。
「CBT疑似体験ソフトウェア」
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/guidance/trial_examapp.html
年度ごとに公開問題が100問収録されていますので、活用して本番に備えましょう。
終わりに
ITパスポートの試験勉強を通して情報処理の基礎知識を身につけることができ、よりITを活用できるようになるでしょう。エンジニアを目指す人にもそうでない人にも取得をおすすめする資格です。
ITパスポートの勉強方法
書籍やインターネットで学習する方法があります。昨今では、YouTubeなどの動画サイトやエンジニアのコミュニティサイトなども充実していて多くの情報が手に入ります。
そして、より効率的に知識・スキルを習得するには、知識をつけながら実際に手を動かしてみるなど、インプットとアウトプットを繰り返していくことが重要です。特に独学の場合は、有識者に質問ができたりフィードバックをもらえるような環境があると、理解度が深まるでしょう。
ただ、ITパスポート試験に限らず、ITスキルを身につける際、どうしても課題にぶつかってしまうことはありますよね。特に独学だと、わからない部分をプロに質問できる機会を確保しにくく、モチベーションが続きにくいという側面があります。独学でモチベーションを維持する自信がない人にはプログラミングスクールという手もあります。費用は掛かりますが、その分スキルを身につけやすいです。しっかりと知識・スキルを習得して実践に活かしたいという人はプログラミングスクールがおすすめです。
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