システムアーキテクト試験とは?難易度やメリット、合格のコツを解説

  • 2023.10.18
       
システムアーキテクト試験とは?難易度やメリット、合格のコツを解説

システムアーキテクト試験とは?

システムアーキテクト試験(SA)とは、IPAの実施する情報処理技術者試験のなかでも高度試験に分類される国家試験です。

そもそも、アーキテクトとは建築家(設計者)を意味する言葉であり、システムアーキテクトは「ITシステムの設計者」ということです。

具体的にいうと、システムアーキテクトはシステム開発の上流工程を主導する立場にあり、豊富な業務知識をもとに的確な分析を行い、品質やセキュリティを確保しながら最適な情報システムを構造設計し、完成に導く上級エンジニアを指します。

システムアーキテクトにはシステム面の要求事項の実現に加えてビジネス要求事項の実現という役割もあります。後者に関しては、最適な情報システムを設計することで結果、ビジネス要求事項の実現につながります。

そして、そういった業務を遂行するうえで必要な知識を問い、システムアーキテクトとしての実力を認定するのが、このシステムアーキテクト試験です。

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システムアーキテクト試験の難易度は?

[試験区分]

難易度が高いと言われるシステムアーキテクト試験ですが、実際にはどうなのか見ていきましょう。

まず、IPAが定めるレベル区分ですが、システムアーキテクト試験は、その最上位にあたるレベル4に分類されます。

では、次に、合格率と受験者・合格者の年齢について見ていきましょう。

受験者数・合格者数・合格率

以下の表は、直近6回分の受験者数・合格者数・合格率・合格者平均年齢を表した表です。

 受験者数合格者数合格率(%)
平成29年度秋期5,53970312.7
平成30年度秋期5,83273612.6
令和元年度秋期5,21779815.3
令和3年度春期3,43356716.5
令和4年度春期3,47452015.0
令和5年度春期3,67958115.8

[統計資料]

受験者・合格者平均年齢

 平成29年度秋期平成30年度秋期令和元年度秋期令和3年度春期令和4年度春期令和5年度春期
受験者平均年齢38.238.238.638.939.239.3
合格者平均年齢36.636.537.336.436.636.6

[平均年齢]

合格率は12~15%で推移しており、合格者平均年齢が30代後半であることからも、IT業界や現場での豊富な実務経験から得た確かな知識と経験もしくは、それに相当する学習時間がなければ容易には突破できない試験だということが読み取れ、高難易度であることが分かりますね。

また、システムアーキテクト試験には4つの試験があることや、午後Ⅰ試験が記述式、午後Ⅱ試験が論述式であることが試験の難易度を押し上げているようです。

システムアーキテクト試験の概要

ここからは、実際に受験を考えている人に向け、試験の概要について説明していきます。

試験日程・実施場所・受験料・受験資格

試験日程年一回春期(4月の第3日曜日)
※令和元年度まで秋期実施
実施場所全国56都市の市内または周辺の試験会場
受験料7,500円
受験資格特になし

試験日程
システムアーキテクト試験は春期に実施されています。例年4月の第3日曜日に実施されており、今年(令和5年度)の実施日は4月16日となります。受験申し込みは1月中旬~2月初めあたりで、今年はすでに受付期間が終了しています。来年以降の受験を考えている人は、その年の1月頃に公式サイトをチェックしておきましょう。

実施場所
試験会場は、会場の定員数の関係で希望する試験地で受験できない可能性があります。余裕をもって申し込みましょう。

受験資格
受験するのに満たす必要のある資格などは特にありませんが、試験を主催するIPAは受験者の対象者像を以下のように定めています。

「高度IT人材として確立した専門分野をもち、ITストラテジストによる提案を受けて、情報システム又は組込みシステム・IoTを利用したシステムの開発に必要となる要件を定義し、それを実現するためのアーキテクチャを設計し、情報システムについては開発を主導する者」

誰でも受験は可能ですが、実力を証明する類の試験であるため、実務経験を積んだエンジニアが自己研磨を目的として受験する場合やこれからの実務経験に活かすという目的をもって試験に臨むのが望ましいでしょう。決して、机上の空論にならないことが重要です。

試験時間・出題形式・出題数・解答数

午前Ⅰ午前Ⅱ午後Ⅰ午後Ⅱ
試験時間9:30~10:20
(50分)
10:50~11:30
(40分)
12:30~14:00
(90分)
14:30~16:30
(120分)
出題形式多肢選択式
(四肢択一)
多肢選択式
(四肢択一)
記述式論述式
出題数30問25問4問3問
解答数30問25問2問1問

午前I、午前Ⅱ試験は全問回答、午後Ⅰ、午後Ⅱ試験に関しては設問を選択して解答します。
2023年10月の試験からの試験要綱の変更に伴い、令和6年(2024年)度春期試験からシステムアーキテクト試験の人材像や出題構成、午後の出題数が変更になります。
具体的には、午後Ⅰ試験、午後Ⅱ試験の組込み分野(IoTソリューションの企画・要件定義・設計・開発等)の出題がなくなりました。
令和5年春期に行われる試験まではITストラテジスト試験、システムアーキテクト試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験の3試験でそれぞれの人材像の役割に対応する工程を担うという構成でしたが、令和6年以降はエンベデッドシステムスペシャリスト試験に集約されます。
これに伴い、システムアーキテクト試験の出題数も変更となり、午後Ⅰ試験は3問、午後Ⅱ試験は2問となります。

試験範囲

◎は重視点分野を指しています。

午前Ⅰ試験(共通問題)
午前Ⅰ試験は高度試験で共通の問題が出題されます。応用情報技術者試験と同じレベル3程度の問題が出題されます。

テクノロジ系
→基礎理論、コンピュータシステム、技術要素、セキュリティ◎、開発技術
マネジメント系
→プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント
ストラテジ系
→システム戦略、経営戦略、企業と法務

午前Ⅱ試験

技術戦略マネジメントと法務以外は午前Ⅰ試験よりも高度なレベル4程度の知識が問われます。

テクノロジ系
コンピュータシステム(コンピュータ構成要素○3、システム構成要素○3)
技術要素(データベース○3、ネットワーク○3、セキュリティ◎4)
開発技術(システム開発技術◎4、ソフトウェア開発管理技術○3)

ストラテジ系
システム戦略(システム戦略○3、システム企画◎4)

午後試験

午後試験では、午前試験と異なり、実践的な内容が問われます。

〔情報システム〕
1 契約・合意に関すること
2 企画に関すること
3 要件定義に関すること
4 開発に関すること
5 運用・保守に関すること
6 関連知識
〔組込みシステム・IoT を利用したシステム〕
1 機能要件の分析,機能仕様の決定に関すること
2 機能仕様を満足させるシステムアーキテクチャ及びハードウェアとソフトウェアの要求仕様の
決定に関すること
3 対象とするシステムに応じた開発手法の決定に関すること
4 汎用的モジュールの利用に関すること

詳細については以下の試験要綱・シラバスを参照してください。

[試験要綱]
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_13download/youkou_ver5_1_henkou.pdf
[シラバス]
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_13download/syllabus_sa_ver5_1.pdf

採点方式・配点・合格基準

システムアーキテクト試験は素点方式で採点され、午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの各試験の得点がすべて基準点以上の場合に合格となります。
試験区分ごとの配点は、午前Ⅰが30問であるため、1問あたり3.4点、午前Ⅱは25点なので1問あたり4点、午後Ⅰ試験は1問50点、午後Ⅱ試験はA~Dの評価ランクによるものとなるため、配点割合はありません。

合格基準としては、午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ試験が100点満点中60点以上、午後Ⅱ(論述式)試験では配点割合はなく、評価ランクがA~Dのうち、ランクAのみが合格となります。

各試験の得点が基準点に達しない場合は、その後に行われた試験の採点はされずに不合格となります。

システムアーキテクト試験を取得するメリットは?

難易度が高く、取得が難しいシステムアーキテクト試験ですが、それだけに取得することで得られるメリットは非常に大きいです。

自身の市場価値を高められる
ITが急速に普及する昨今、ITエンジニアの市場価値は高まっていますが、なかでも上級エンジニアとしてのスキルを認定するシステムアーキテクト試験は非常に高い評価を受けます。取得することで担当できる案件の幅が広がり、より上流の設計に携わることができるなど、自然と自身の市場価値を大きく押し上げることができるでしょう。

実力を証明する指標になる
に関するスキルは定量的にアピールしづらいですが、こういった難関資格を取得することで、高度なスキルを有していると客観的に示すことができます。これにより、好条件での転職が叶ったりと、キャリアアップにも役立つでしょう。

資格手当や報奨金がもらえる
企業によっては、合格者に対して、資格手当や一時金などの報奨金を付与する制度を設けています。相場としては資格手当が10,000円〜20,000円/月、報奨金はおよそ120,000円です。

試験の一部免除が受けられる
ほかの資格試験で一部免除制度が受けられます。具体的には以下のようなものがあります。

  • 中小企業診断士試験
    第1次試験科目の一部免除
  • 弁理士試験
    論文式筆記試験選択科目(理工Ⅴ(情報))の免除
  • 技術士試験
    第一次試験の専門科目(情報工学部門)の免除
  • ITコーディネータ(ITC)試験
    ITコーディネータ試験の一部が免除される専門スキル特別認定試験の受験が可能

システムアーキテクト試験に合格するコツは?

まず、実際にシステムアーキテクト試験を受けた人から見た試験の特徴について知っておく必要があります。

受験者から見たシステムアーキテクト試験の特徴

最大の特徴は午後Ⅱ試験において論述式の問題が出題されることです。ほかにも論述式の問題が出題される試験はありますが、キャリア形成の面で、システムアーキテクト試験で論述式の問題に初挑戦するという人が多くので、なじみがなく難しいと感じる受験者も多いようです。

また、午前に行われる2つの試験の内容はレベル3に値する応用情報技術者試験の午前問題とそれほど変わらないという点です。

では、これらを踏まえて、4つの試験それぞれの特徴に合わせた対策について解説します。

傾向・対策・合格のコツ

午前Ⅰ試験
午前Ⅰ試験の問題は、ほとんど同時期に行われる応用情報技術者試験の午前試験からの流用が大半を占めます。午前I試験や応用情報技術者試験の過去問をひたすら解き、間違えた箇所を復習して覚えなおすという学習方法がおすすめです。
過去問は公式ページに掲載されています。

[過去問題

ちなみに、受験者の半数以上が、午前Ⅰ試験を免除しています。
以下に該当する人であれば、この免除制度が2 年間有効です。

(1)応用情報技術者試験に合格する。
(2)いずれかの高度試験又は支援士試験に合格する。
(3)いずれかの高度試験又は支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績を得る。

ITストラテジスト試験は4つの試験があり、長丁場になるため、少しでも負担を軽減するよう上記免除制度の該当者には積極的な利用をおすすめします。

午前Ⅱ試験
午前II試験は、午前I試験と同様に多肢選択式の問題となっていますが、午前I試験よりも出題範囲が絞られ、より深い、専門的な知識が問われます。ただ、出題範囲が狭いため、対策はしやすいでしょう。
特に、出題範囲で示したとおり、「システム開発技術」「情報セキュリティ」「システム企画」の重点分野になっており、出題数も多いため、重点的に学習する必要があります。
過去問演習の際に、間違えた問題やよくわかっていないと感じた問題はそのままにせず、きちんと問題や選択肢の意味を理解するようにしましょう。
また、過去問演習に加え、最新事例に関する問題も出題されるため、情報収集を欠かさず行いましょう。

午後Ⅰ試験
午後Ⅰ試験は90分間で4つの大問から2問を選んで記述式で解答する問題です。問題文を読み、問題点や改善点を回答していきます。ただ、その問題文が非常に長文で、内容を瞬時に理解するなかなか難しいです。そのため、先に設問を読み、問われている内容を把握するのがいいでしょう。
設問に対して簡潔にまとめて解答する能力が求められます。問題文にヒントが散りばめられていることが多く、解答例も問題文にある単語をそのまま使用したものが多くあります。
短時間で正しく読解する練習を行い、そして短い文字数で簡潔に解答する練習、それから演習量をこなして解答スピードを上げていくというのがおすすめです。

午後Ⅱ試験
午後Ⅱ試験は2時間で、3つの大問から1問を選び、特定のテーマに関して論述式で解答していく問題です。3つの設問に対して、経験と考えをもとに論述しますが、設問ごとに字数制限が設けられており、3つの設問で合わせて約3000文字と、かなり長い文章を書かなくてはなりません。
また、自分の考えや経験などを他者にわかりやすく伝える必要があります。
さらに、知識や文章構成力に加えて上級エンジニアとしての立場を意識した論述ができているかという点も意識しなくてはなりません。
まずは、文章を書く構成力を身につけることです。それぞれの設問に対する内容を箇条書きで書き出し、そこから肉付けしていくのがコツです。

当日にテーマを見て一からアイデアを考えて、文章化するのは現実的ではありません。頻出のテーマについては「この内容をこの順番で書く」といった論述ネタをいくつか持っておくというのもおすすめです。

まとめ

システムアーキテクト試験は、IT資格のなかでも高難度資格の一つです。
しかし、その分取得することで得られる社会的な評価は高く、キャリアアップにも非常に有用な資格です。
上級エンジニアとして活躍していくには、ぜひ取っておきたい資格といえます。
合格にはやはり、学習時間の確保が必須です。
受験を考えている人は、一日でどれくらいの時間を試験勉強に充てられるか、また、自身の知識レベルや経験値からどの程度の勉強時間を確保すべきかを考慮し、試験当日までに必要な期間を逆算して、学習を開始しましょう。

システムアーキテクト試験の勉強方法

書籍やインターネットで学習する方法があります。昨今では、YouTubeなどの動画サイトやエンジニアのコミュニティサイトなども充実していて多くの情報が手に入ります。
そして、より効率的に知識・スキルを習得するには、知識をつけながら実際に手を動かしてみるなど、インプットとアウトプットを繰り返していくことが重要です。特に独学の場合は、有識者に質問ができたりフィードバックをもらえるような環境があると、理解度が深まるでしょう。

ただ、システムアーキテクト試験に限らず、ITスキルを身につける際、どうしても課題にぶつかってしまうことはありますよね。特に独学だと、わからない部分をプロに質問できる機会を確保しにくく、モチベーションが続きにくいという側面があります。独学でモチベーションを維持する自信がない人にはプログラミングスクールという手もあります。費用は掛かりますが、その分スキルを身につけやすいです。しっかりと知識・スキルを習得して実践に活かしたいという人はプログラミングスクールがおすすめです。

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