システム開発やソフトウェア開発において、開発作業を支える「フレームワーク」は重宝されています。ただ、一口にフレームワークといっても、Rubyでの開発にはRuby on RailsやSinatra、PHPの開発にはLaravelやCakePHPというように、どのプログラミング言語でどんなものを開発するかによって、その開発に適したフレームワークが存在します。
そこで、本記事ではWeb開発に適したPHPのなかでも、人気を博しているフレームワーク、「Laravel」について解説します。
Laravelとは?
LaravelはPHPでWeb開発をする際に用いられるフレームワークです。PHPで開発を行う際、柔軟で多機能なLaravelを活用することで効率的に開発を進められます。マイクロソフトの.NETの開発に携わっていたTaylor Otwell氏によって開発され、2011年6月にリリースされてから、今に至るまでアップデートされ続けています。
大規模開発向きの「Symphony」というPHPフレームワークを土台にし、それに加え、ほかのフレームワークも参考にして開発されたため、今までほかのフレームワークを使ってきた人にとっても扱いやすいでしょう。
また、フレームワーク自体の習得も比較的容易であるという手軽さから人気を集め、PHPフレームワークとしては後発ながら、それまでトップシェアを誇っていた「CakePHP」に代わって2019年以降はLaravel がトップに躍り出て、今では、世界で最も利用されているPHPフレームワークと称されるようになりました。
Googleトレンドを見ても、その人気は一目瞭然ですね。
LaravelとCakePHPの違いは?
先述のとおり、Laravelの登場以降、それまでトップシェアを誇っていたCakePHPの利用者数が減少傾向にあるといわれています。しかし、CakePHPはいまだに根強い人気があります。
LaravelとCakePHPはしばしば比較されますが、両者にはどういった違いがあるのでしょうか。LaravelとCakePHPの違いは諸々ありますが、最大の違いは「コードの書き方」です。
Laravelはコーディングにおいて自由度が高い一方でCakePHPのコーディングには一貫性があります。CakePHPはLaravelと比べて、柔軟性は劣り、後から仕様変更しにくいものの、大人数で大規模な開発を行う場合に重宝されます。
フレームワークとは?
システム開発における「フレームワーク」とは、システムやアプリを開発するのに頻繁に使う機能の動作や処理をひとまとめにしたものです。
基本的な骨組みがある分、必要最低限のプログラムのみで開発を進められるので、開発にかかる期間の大幅な短縮できます。また、書き方も統一されるので、誰にでもわかりやすいコードになり、開発メンバー間で情報共有がしやすくなります。さらに、仕様変更やコードの再利用も簡単になるなど、フレームワークを利用することで業務を効率化に役立ちます。
PHPとは?
PHPは、Web開発に適した言語で、テキストベースでコーディングできるという特長から、プログラミング初心者にもやさしい言語として人気があります。
Web開発のなかでも、PHPは動的なWebページ(そのページにアクセスするタイミングやユーザーによって、異なる文章や画像が表示されるページ)の作成に長けており、当サイトでも利用しているワードプレスもPHPが使われています。
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PHPとは|基礎からわかりやすく解説
Laravelの特徴は?
MVCモデルで分業開発がしやすい
Laravel は設計にMVCモデルというソフトウェアのデザインパターンを採用しています。これは、役割ごとにプログラムの処理を分けて開発するという考え方で、Laravel 以外にもさまざまなフレームワークに用いられています。
MVC とはModel(モデル)、View(ビュー)、Controller(コントローラー)の略称です。
Model(モデル)
データベースに対してデータの登録・取得・更新・削除などを行う。
View(ビュー)
ブラウザに表示される画面の作成を行う。ユーザが直接目にする箇所であり、WebページやWebサービスの見た目を決める際に欠かせない。
Controller(コントローラー)
ユーザからの要求に対して、ModelとViewの連携を行う。ModelやViewはそれらに対してControllerが命令を与えることで初めて実行される。
開発現場において、フロントエンドとバックエンドで分けて開発を進めるのが一般的ですが、PHPはバックエンド言語でありながら、HTMLに直接記述していく言語であるため、ユーザの目に触れるフロントエンド部分と、裏側で動くバックエンド部分の開発が混同しやすい傾向があります。
このとき、MVCモデルでは、ユーザーの目に触れる部分をView、データベースとのやり取りなどのユーザーに触れない部分をModel、ViewとModelが仲介する部分をControllerと3つに分担します。
例えば、会員登録をする入力フォームを作成するとしましょう。
このとき、まずユーザの画面には入力フォームが表示され、ユーザはユーザ情報を入力したのちに、登録ボタンを押します。そして、入力された値に問題なければデータベースにデータが登録され、登録完了ページに移ります。
しかし、この一連の流れを1つのファイルに書くこともできますが、複雑で読みにくいコードになってしまいます。
そこで、MVCモデルでは以下のような役割ごとに分け、①と④のようなユーザの目に触れる部分をView、③のようなユーザの目に触れない部分をModel、②のようなデータの受け渡しや確認といった仲介部分をControllerというように分担して開発します。
①ユーザー情報の登録ページ
②入力データの確認
③データベースへの登録
④登録完了ページへの移行
3つの機能ごとに役割分担をすることで、アプリ開発を効率的に分業が可能になるだけでなく、コードが整理されて見やすいので仕様の変更や再利用にも柔軟に対応できます。
改良が頻繁に行われている
Laravelは、人気が高く、ユーザが多いこともあって新たな機能やプラグインの開発が盛んに行われています。より簡単に使えるよう、開発をサポートする新機能が年々追加され、細かなバージョンアップも頻繁に行われています。
学習が容易でコストも低い
PHP自体が初心者にやさしい言語ということもありますが、Laravel は数あるPHPフレームワークのなかでも、学習しやすいといわれています。それは、コードがシンプルで読み書きしやすいのに加え、既存のフレームワークの良い部分を取り入れて作られているためです。
また、世界的に利用ユーザ数が多く、教材や学習サイトなど、学習ツールも豊富にあることから、学習コストを抑えられます。このように、習得までにかかる時間やコストを抑えられるので、学習を始めてから早い段階で開発を進められます。
自由度が高い
Laravelはフレームワークのなかでは、規約が少なく、柔軟にディレクトリの配置やプログラムの拡張の変更ができるので、スピード感のある開発現場では重宝されます。
Composerでパッケージ管理できる
LaravelはComposerというパッケージ管理システムを使用しています。これは、開発の際に必要となるパッケージやライブラリを管理・インストールする機能を持つツールです。
あるライブラリ使用時にほかのライブラリもインストールしなければならないといった依存性の問題が起こる場合がありますが、Composerがあれば、コマンド一つで必要なライブラリをまとめてインストールしてくれるので便利です。
データベースの操作が簡単
Laravel には、データベースとモデルにリレーション(関連性)を持たせることで、データ操作を簡単にするEloquent ORM(エロクアントORM)とデータ変更などをMVCモデルのモデル側から行うことデータベースの管理を簡単にするMigration(マイグレーション)が備わっているので、データベースの接続や作成なども、少ない記述量で済み、セキュリティ性を保持できます。
Eloquentは、Laravelが独自で提供するO/Rマッパーというアクティブレコード機能で、ORM(オブジェクトリレーションマッピング)によってデータ操作が簡単になります。
artisan(アルティザン)コマンドで作業量を減らせる
Laravelには、artisanという独自のコマンドツールが備わっています。これを利用することで、データベース管理やサーバの起動、ファイルの作成といった操作がコマンドライン上で行えるようになり、Web開発や業務システムの開発も少ないコードで効率的に行えます。
簡単にバリデーションの設定ができる
バリデーションは入力された値をチェックすることです。バリデーションはフォームを作成した際などに利用しますが、Laravelでは簡単な設定でバリデーションを行えます。
入力値には整数や日付、メールアドレスなどいろいろありますが、入力値をいちいち確認してプログラムの記述を行っていては時間がかかってしまいますが、Laravelを使えば大幅に作業時間を短縮できます。
軽量なBladeテンプレートを使っている
LaravelはView(画面表示)に、Bladeテンプレートという軽量なテンプレートエンジンを採用しています。Bladeには便利な機能がもとから備わっているテンプレートに変数や処理を入れる形で編集することで簡単に実装できるので、短い記述量で済みます。
Laravelでできることは?
先述しましたが、多くの機能が搭載され、柔軟な開発ができるLaravelを使えば、webブラウザで動く大抵のシステムを開発できます。
たとえば、以下のようなものがあります。
- 内容を頻繁に更新するサイト
- クチコミサイト
- 購入履歴によるリコメンド機能のあるECサイト
Laravelの注意点は?
Laravelは自由度が高いのはメリットでもありますが、だれもが自由に設計できてしまう分、大人数での大規模な開発を行う際は、注意が必要です。各々の状況を把握するために、ある程度のルールを定め、開発ドキュメントを作成しておく必要があります。
また、処理速度に関してはCakePHPに劣ります。さまざまな機能を活用すると、処理量が増えて動作が遅くなってしまうことがあります。
Laravelの導入方法は?
PHPをインストールする
Laravelの導入には、Laravel以外にも準備しなくてはならないものがあります。まずPHPをインストールしましょう。その方法には複数ありますが、PHPの開発環境であるXAMPP(ザンプ)を使って取り込むのが主流です。XAMPPとは、Laravelに限らず、webアプリケーションを実行するのに必要となるソフトウェアをパッケージ化したものです。XAMPPの公式ページから自身のOSに合うXAMPPを選択してダウンロードしましょう。
ダウンロード後、Windowsの場合は、配置場所の設定やコンポーネントの選択をしてからインストールを実行する必要があります。macOの場合は、ドラッグ&ドロップのみでアプリケーションを使用できる状態になります。
Composerをインストールする
PHPをインストールしたら、次にPHPパッケージ管理ツールであるComposerをインストールしましょう。Composerは、Laravelのインストールには必須となるシステムです。ここでも、OSによってインストール方法が異なります。
【Windowsの場合】
- Composerのダウンロードページからダウンロードする
- ダウンロードしたファイルを実行する
- オプション画面で選択する
- プロキシ設定をする
- 表示画面に沿ってインストールする
【Macの場合】
- ターミナルコマンドでダウンロードを実行する
- コマンドで動作確認を行う
Laravelをインストールする
Laravelをインストールします。これはOSに関係なく、マンドプロンプトでソースコードを入力し、実行するだけです。Laravelの画面が表示されたら準備は完了です。
Laravelの勉強方法は?
書籍やインターネットで学習する方法があります。昨今では、YouTubeなどの動画サイトやエンジニアのコミュニティサイトなども充実していて多くの情報が手に入ります。
そして、より効率的に知識・スキルを習得するには、知識をつけながら実際に手を動かしてみるなど、インプットとアウトプットを繰り返していくことが重要です。特に独学の場合は、有識者に質問ができたりフィードバックをもらえるような環境があると、理解度が深まるでしょう。
ただ、Laravelに限らず、ITスキルを身につける際、どうしても課題にぶつかってしまうことはありますよね。特に独学だと、わからない部分をプロに質問できる機会を確保しにくく、モチベーションが続きにくいという側面があります。独学でモチベーションを維持する自信がない人にはプログラミングスクールという手もあります。費用は掛かりますが、その分スキルを身につけやすいです。しっかりと知識・スキルを習得して実践に活かしたいという人はプログラミングスクールがおすすめです。
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