PHPは人気の高いプログラミング言語であり、多くのWebサービスの開発に用いられています。そして、そのPHPを用いて開発を行う際に、開発の効率化を目的に用いられるのが「PHPフレームワーク」です。
フレームワーク選びは重要ですが、PHPは人気の高い言語であるがゆえに、フレームワークの種類も多く、どれを使うべきか迷ってしまう人もいるかと思います。
そこで本記事では、これからPHPを学ぶ入門者から、おすすめのPHPフレームワークを知りたい、最新の情報を知りたいと考えるITエンジニアを対象として、
PHPフレームワークとはなにか
どんな種類があるか
2024年にどのPHPフレームワークを使うべきか
といった内容を中心に解説します。フレームワーク選びの参考になれば幸いです。
PHPとは?
PHP(正式名称:Hypertext Preprocessor)は、1995年に登場したサーバーサイドのプログラミング言語です。WebサービスやWebアプリの開発に特化しており、PHPを使うことで、動的なページ(アクセスする時間帯や利用者によって表示内容が変わるもの)を作成できます。
PHPは、仕様や文法がシンプルで理解し易いため、初学者にもやさしい言語としても定評があります。PHPは人気の高いプログラミング言語であり、Facebookや楽天市場、メルカリ、WordPress、Slackなど、多くの有名なWebサービスの開発に用いられています。そのため、今後もPHPを用いたWeb開発は拡大していくことが予想されます。
ITエンジニアにとってPHPは押さえておきたい言語といえます。
PHPフレームワークとは?
フレームワークには、「枠組み」「骨組み」といった意味がありますが、システム開発における「フレームワーク」とは、システムやアプリを開発するのに頻繁に使う処理をひとまとめにしたものです。
開発に必要となる凡庸処理をあらかじめ備えているため、簡単なコマンド操作のみで、完成またはほとんど完成した状態のプログラムを生成してくれます。
すべてを一からコーディングすると膨大な時間と労力がかかりますが、必要最低限のプログラムのみで開発を進められ、開発工程を省けて、開発期間を短縮できます。
また、フレームワークの書き方に沿って開発を進めるため、複数人で作業する場合でもコードの書き方を統一でき、機能追加や改修が楽になります。
このように、フレームワークは、一定の質を担保しながら開発者の負担を軽減してくれる、便利な開発者サポートツールといえます。
PHP自体が扱いやすい言語ですが、フレームワークを活用することで、より一層開発がしやすくなるため、開発の現場でもフレームワークを利用するのが一般的になっています。
フレームワークを利用するメリット
開発効率が上がる
フレームワークは、凡庸処理をサポートしてくれるため、開発効率が上がります。一から作ると、数日かかるような機能でもフレームワークを使用することで、数分で作成できるといったこともあります。これにより、開発者の負担の軽減や開発期間の短縮につながります。
保守性が上がる
フレームワークは、それぞれに独自の規約やルールが設けられています。フレームワークのルールに沿って作業することで複数人での作業でもコードの書き方を統一しやすくなり、コードの可読性も上がります。これにより、チーム間の情報共有やメンテナンス作業がしやすくなります。
堅牢性が上がる
セキュリティ対策を意識したコードを書くには一定以上の知識が必要です。主要なPHPフレームワークはすでにセキュリティ対策が施されたものを提供しているため、その手間を省け、セキュリティも強固なものとなります。
フレームワークを利用するデメリット
学習時間を要する
フレームワークを利用することで得られるメリットは多いですが、使いこなすにはPHPに関する知識に加えてフレームワーク独自の知識も必要になります。
カスタマイズ性が劣る
フレームワークは便利な分、あらかじめできあがったフォーマットを基に開発を行うため、細かいカスタマイズは難しく、独自の機能を実装する場合やイレギュラーな処理を行う場合には自身で行う必要があるため、場合よってはかえってフレームワークを使わないほうがいいという場合もあります。
ブラックボックス化しやすい
手軽に利用できるフレームワークですが、逆に言えば、PHPに関してあまり理解していなくても開発ができてしまうということです。そのため、何かしらのトラブルが起こった際に、原因を特定しにくくなってしまいます。
フレームワークとライブラリの違い
フレームワークは、しばしばライブラリと混同されることがあります。どちらも開発をサポートするためのプログラムの集合体ですが、その役割は異なります。
フレームワークは、開発全体の枠組み・ひな形を提供するもので、テンプレート化しているので大きな仕様変更はできません。一方で、ライブラリはどの開発でもよく使う汎用性の高いプログラムをまとめたもので、いわば「コーディングを手軽にするための部品」です。コードのどの箇所にでも使いたいときに呼び出せば使えます。
PHPフレームワーク9選
PHPフレームワークのなかでも比較的知名度が高いものを紹介します。
<前提知識>わかる人は読み飛ばしてOK
▼MVCモデル
MVCモデルでない場合、データ処理から画面表示までの一連の流れを1つのファイルに記述するため、コードが複雑化する傾向にあるが、MVCモデルを採用したフレームワークであれば、機能ごとに別のファイルでコードを記述でき、可読性(コードの読みやすさ)、保守性(情報共有やメンテナンスがしやすさ)が上がり、開発効率が上がる。
▼Composer(ライブラリ依存管理ツール)
Composer機能を利用することで、ライブラリの依存関係が発生しても自動処理を行ってくれるため、その都度発生する記述や個別の管理の手間が省けて開発効率が上がる。
▼規約の多さ・フレームワークの思想
規約やルールが多い、または規約を重視したフレームワークだと覚えることが多く、学習コストは高くなるが、その分、安定性や保守性が高まる。
逆に、規約やルールが少ない、または設定を重視するフレームワークだと、自由度が高く学習コストが低めだが、自身で規約を意識する必要がある。
▼フレームワークの種類
「フルスタックフレームワーク」
あらかじめ開発に必要となるさまざまな機能がひととおり備わっているフレームワークです。
多機能で大規模開発にも対応できます。ただ、その分、覚えることが多く、学習コストが高いです。また、いろいろ揃っていて便利な分、カスタマイズできる部分も限られてしまいます。
「マイクロフレームワーク」
同時に複数接続処理ができるフレームワークです。データの送受信でタイミングを合わせる必要がないため、レスポンスが早く効率的に作業できます。
Laravel
Laravelは、2011年に後述の「Symfony」を土台として開発されたオープンソースのフルスタックフレームワークです。PHPフレームワークのなかでも圧倒的な人気を誇るフレームワークで、WordPressの開発にも利用されています。
文法がシンプルで構文も直感的であるため、理解し易く、日本語の公式ドキュメントも提供されているほか、ユーザ数も多いため、インターネット上に情報も豊富にあり、学習コストが低いです。また、入力チェック機能など、便利な機能やライブラリも充実しています。このように、学習のしやすさと使いやすさから、後発のフレームワークながら、今では、世界で最も利用されているPHPフレームワークとなっています。MVCモデルを採用し、composerも搭載されているため、効率的な開発が可能です。大規模開発向きとなっていますが、小規模開発にも適しています。
CakePHP
CakePHPは、2005年にリリースされたオープンソースのフルスタックフレームワークです。MVCモデルを採用し、composerも搭載されているため、効率的な開発が可能で、大規模開発向けです。
Ruby on Railsの影響を受けており、開発を効率的に進めるためのサポート機能が豊富に備わっています。CakePHPの一番の特徴は、bakeという機能です。bakeは対話型のインターフェイス機能で、開発者は質問に答えていくだけでModel、View、Controllerそれぞれのプログラムを自動で作成してくれる機能で、ソースコードを書かずにファイルを作成できます。そのうえ、軽量で動作も高速です。
また、Laravelと同様に日本語の情報が豊富にあるため、学習もしやすいです。
Laravelが登場して以降はPHPのフレームワークのシェアにおいて首位を譲ってしまいましたが依然として人気があり、多くの企業やサービスで利用されています。
規約に重きが置かれており、一貫性の高いコードを実装できるという点も魅力です。
Laravelに比べてスピーディーな開発ができますが、柔軟性や拡張性で劣っているため、大規模開発にはLaravelの方が向いているでしょう。
FuelPHP
FuelPHPは、2010年にリリースされたオープンソースのフルスタックフレームワークです。MVCモデルを採用し、規約も少ないため、柔軟で自由度の高い開発ができます。クラスを自動で読み込むオートローダ機能で必要なクラスのみを読み込むことで、メモリの消費を抑えるため高速処理が可能です。
シンプルなWebアプリやAPIの開発に適していて、開発スピードを重視する人向けのフレームワークです。日本語の情報が豊富にあるため、学習もしやすいです。クイックインストールですぐに使い始められるため、小規模開発や個人での開発に多く用いられています。
Symfony
Symfonyは、2005年にリリースされたオープンソースのフルスタックフレームワークです。その堅牢性が評価されて多くの企業で利用されています。MVCモデルを採用し、composerも搭載されているため、効率的に開発を進められます。「バンドル」という再利用可能なコードをまとめたモジュールを作成して開発を進めていきます。
規約に重きが置かれており、一貫性の高いコードを実装できます。プラグインが充実しており、拡張性も高いことから大規模開発に向いています。安定的な運用をしたい人向けのフレームワークです。
年に2回の定期的なアップデートがあり、機能追加や脆弱性対策が行われるため、オープンソースでありながら安心して利用できます。
Codeigniter
Codeigniterは、小規模開発向けの軽量なフルスタックフレームワークです。必要最低限の機能が備わっており、適宜必要なものを拡張していく仕様であるため、動作も高速です。
また、規約も少ないため、開発の自由度が高いのも特徴です。さらに、WebアプリやWebサイトの脆弱性を狙ったサイバー攻撃を防ぐセキュリティ機能も備わっているため、安全な運用ができます。
学習コストも低いため初心者向けです。
MVCモデルを採用し、composerも搭載されているため、効率的に開発できます。さらに、ライブラリも充実しており、ライブラリにアクセスするインターフェースも備わっているなど、開発者の負担を軽減してくれます。開発スピードを重視する場合におすすめです。
日本ではあまり利用されていませんが、海外では人気があります。
Phalcon
Phalconは、オープンソースのフルスタックフレームワークです。MVCモデルを採用し、composer機能も利用できるため、効率的な開発ができます。また、拡張性が高く、自由な開発ができますが、自身で注意する必要があります。
そして、Phalconの一番の特徴はコア部分がC言語で実装されていることです。
C言語はインタープリタ方式に比べて、処理速度が速いコンパイル方式であるため、コア部分がC言語で実装されたPhalconは多くの処理を必要とする大規模開発やスピーディーな開発に適しています。といっても柔軟性が高いため小規模開発にも対応可能です。
日本語の情報はそれほど多くないため、中級者以上におすすめのフレームワークです。
Laminas
Laminasは、2019年にZendFrameworkから改名されたオープンソースフレームワークです。MVCモデルを採用し、composerも利用できるため、効率的に開発できます。また、ほかのフレームワークと比べて規約が少ないため、自由度の高い開発ができます。さらに、ライブラリが充実しており、拡張性も高いため、大規模開発向きです。改変コードを非公開にすることもでき、商用利用にも対応しやすいです。ただ、利用者がそれほど多くない点や日本語の情報が少ない点で、学習コストが高くなります。
Yii
Yiiは、2008年にリリースされたオープンソースのフルスタックフレームワークです。キャッシュ機能が充実しており、動作が軽量なため、アクセス負荷がかかりやすいポータルサイトやCMSの開発での利用が多いです。部品ごとに開発を進めるコンポーネントベースで再利用性が高く、さらに、MVCモデルを採用したフレームワークであるため、効率的に開発できます。日本ではそれほど利用されていませんが、海外では大規模開発を中心に人気があるフレームワークです。
Slim
Slimは、必要最低限の機能が備わった軽量なオープンソースのマイクロフレームワークです。機能が最小限に抑えられおり、覚えることも少ないので手軽に利用できます。シンプルなWebアプリやAPIの開発におすすめです。Composerをインストールして利用します。
PHPフレームワークのトレンド
Googleトレンドを用いて、どのPHPフレームワークが検索されているか、比較結果は以下のとおりです。
※知名度の高い上位5つのフレームワークで比較しています。
青:Laravel
赤:CakePHP
黄:Symfony
緑:Codeigniter
紫:FuelPHP
「PHPフレームワーク比較結果(世界)」
「PHPフレームワーク比較結果(日本)」
上記の結果から、2023年時点の日本におけるPHPフレームワークの人気は、Laravelが圧倒的で、首位と大差でCakePHPが2位、続いてSymfony、CodeIgniter、FuelPHPとなっています。
Laravelの台頭により、それまで圧倒的だったCakePHPの人気が下降しています。
Symfony、Codeigniter、FuelPHPに関しても、Laravelの伸びに呼応するように、徐々に下降していているのがわかります。
これは、Laravelの使い勝手の良さからほかのフレームワークから移行した人を含めてユーザ数が増え、シェアを伸ばしていったことと推測できます。
また、5年以上大きな変化がないことから、今後もこの状況が大きく変わることは考えづらいです。
PHPフレームワークの選び方
どのフレームワークを選ぶかでその後の働き方や年収も変わってきます。
次に紹介するいくつかの観点を加味して総合的に判断するのがいいでしょう。
採用実績・トレンドで選ぶ
基本的には、多くの企業で利用されているなど、採用実績のあるフレームワーク、トレンドを考慮してフレームワークを選ぶのがおすすめです。
人気の低いフレームワークだと、インターネット上にも情報が少なく、学習コストも高くなるうえに、せっかく習得してもニーズがなければ、そのフレームワークを採用する企業が少なければ仕事にもつながりにくいでしょう。
先述したトレンドを考慮して、ニーズのあるフレームワークのなかから自身の作成したいシステムや参画したいプロジェクト規模に合うものを選びましょう。
トレンドを押さえることで、仕事に活かしやすくなるのです。
学習コストで選ぶ
特に初学者の場合は学習コストの低いフレームワークを選ぶのをおすすめします。
シンプルなものであれば仕組みを理解し易いです。また、学習サイトや書籍が豊富にあればわからないことが出てきても解決しやすいです。
逆に、中級者・上級者であれば、難易度の高いフレームワークを選ぶことでほかのエンジニアとの差別化を図れて自身の希少価値を上げられます。
フレームワークを触ってみるのもアリ
チュートリアルが提供されている場合は実際に試すことで、そのフレームワークでできることや自身との相性、使い勝手をより具体的に知ることができます。
どのPHPフレームワークにするか迷ったら?
それでも迷ってしまうという場合は、求人数が多く、学習もしやすいLaravelがおすすめです。
学習コストが低く、学習に適した環境が整っています。また、Laravelの求人数もほかのフレームワークと比べても圧倒的に多いのが現状です。Laravelを一通りおさえることで、後々別のフレームワークを学ぶ際にも理解し易くなります。
複数のフレームワークの知識やクラウドの知識が求められる案件では必然的に年収を高く設定される傾向にあります。Laravelを足掛かりにほかのフレームワークを学習するのもおすすめです。
最後に
ここまで、代表的なPHPフレームワークをいくつか紹介しました。
フレームワーク選びでは、人気があり、なるべく利用者が多いものであれば情報も多く、学習しやすいです。また、フレームワークにも流行り廃りがあるため、トレンドを考慮することも重要です。
また、フレームワークにも向き不向きがあり、開発規模も異なるため、人気や将来性の高いフレームワークのなかから、自身の目的や用途に合ったものを選ぶのが賢明です。
開発規模や学習コストを考慮したうえで、目的に合ったものを選びましょう。日々新しいフレームワークが開発されているのでPHPやフレームワーク、ライブラリといった周辺知識に関する情報をアップデートしていくことも大切です。
PHPフレームワークの勉強方法は?
書籍やインターネットで学習する方法があります。昨今では、YouTubeなどの動画サイトやエンジニアのコミュニティサイトなども充実していて多くの情報が手に入ります。
そして、より効率的に知識・スキルを習得するには、知識をつけながら実際に手を動かしてみるなど、インプットとアウトプットを繰り返していくことが重要です。特に独学の場合は、有識者に質問ができたりフィードバックをもらえるような環境があると、理解度が深まるでしょう。
ただ、PHPフレームワークに限らず、ITスキルを身につける際、どうしても課題にぶつかってしまうことはありますよね。特に独学だと、わからない部分をプロに質問できる機会を確保しにくく、モチベーションが続きにくいという側面があります。独学でモチベーションを維持する自信がない人にはプログラミングスクールという手もあります。費用は掛かりますが、その分スキルを身につけやすいです。しっかりと知識・スキルを習得して実践に活かしたいという人はプログラミングスクールがおすすめです。
プログラミングスクールならテックマニアがおすすめ!
ITスキル需要の高まりとともにプログラミングスクールも増えました。しかし、どのスクールに通うべきか迷ってしまう人もいるでしょう。そんな方にはテックマニアをおすすめします!これまで多くのITエンジニアを育成・輩出してきたテックマニアでもプログラミングスクールを開講しています。
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