Python は、少ない記述量で読みやすいプログラムが書けるプログラミング言語で、写真共有プラットフォーム「Instagram」や動画プラットフォーム「YouTube」、話題の「ChatGPT」など、多くの開発に利用されてます。また昨今では、AI 市場拡大に伴って、最先端分野の開発にも適したPythonに注目が集まっています。
本記事では、そんなPythonについて基礎知識から特徴、できること、活用事例を中心に紹介します。
Pythonとは?
Pythonとは、幅広い開発ができるインタプリタ型のプログラミング言語です。
1991年にオランダ出身の Guido van Rossum(グイド・ヴァン・ロッサム)氏が「Amoeba」という分散OSのシステムの管理を行うために開発し、2022年現在でもバージョンアップが行われ、そのたびにさまざまな機能が追加されています。
文法がシンプルでありながら主要な OS であれば動作するといった汎用性の高さから世界中で多くのエンジニアから支持されており、AI開発やアプリ開発など、さまざまな分野で使用されています。
また、無料でインストールでき、読み書きもしやすいことからプログラミング初心者にも学びやすい言語でもあります。
TIOBE Softwareが発表した「TIOBE index for May 2022」というプログラミング言語の人気ランキングで1位を獲得しています。この指標は、Google や Wikipedia、Amazon などの主要な検索エンジンの検索結果を分析して作られているため、非常に信頼性が高いものです。
Pythonの特徴
コードが読みやすい
Python は記法や文法がシンプルで覚えやすいうえに、簡潔に書けるので読みやすいので、プログラミング初心者にも学習しやすい言語です。1行で多くの処理を記述できるため記述量も少なく済み、また、自由度が比較的低いので、コードの統一性も上がり、書きやすく読みやすいコードになります。また、豊富なライブラリがあることで複雑な機能を簡単に実装できる点やインデントでブロックを区切ることで視認性が高まることでコーディングや保守がしやすいです。
ここで実際に、PythonとC言語でコード量を比較してみましょう。
C言語の場合
#include <stdio.h>
int main(void)
{
printf("Hello, World!");
return 0;
}
Pythonの場合
print("Hello, World!")
コンパイル不要でコードを修正しやすい
プログラミング言語をコンピュータが理解できる機械語に変換することを「コンパイル」といい、コンパイルしたプログラムをもとに命令する言語は「コンパイル言語」と呼ばれ、代表的なものにJavaやC++などがあります。コンパイル言語はプログラムに不備があるとエラーが出てコンパイルできず、動作もしません。その一方で、Python、PHP、Ruby、JavaScriptなどの、一つ一つの命令をその都度解釈してプログラムを動かす言語を「インタプリタ言語」といいます。コンパイル作業が必要ないため容易にコードの修正や確認、実行できます。不備があってもとりあえず動くので、ミスに気付きにくいという側面があります。
習得ハードルが低め
Pythonは文法や記法がシンプルな言語です。プログラミング言語にはあらかじめ特定の用途が決められた「予約語」が設定されていますが、PHPが80程度、C++が60程度であるのに比べ、Pythonには35と少なっています。記述が自然言語に近いので理解し易く習得のハードルが低いのも特徴です。このように、プログラムの記述や実行が簡単にできる言語を「スクリプト言語」といいます。Pythonはスクリプト言語の代表格と称されますが、そもそもスクリプト言語に厳密な定義はありません。
大規模開発にも適している
オブジェクト指向言語とは、データとそれに付随する手続きをひとまとめにした「オブジェクト」を基本単位として扱い、オブジェクト同士がやりとりすることで処理を進めるオブジェクト指向を基準に設計された言語を指します。
オブジェクト指向は設計・開発を効率的に進められるだけでなく、開発後のメンテナンスもしやすいなど、大規模な開発にも適した言語です。
専門分野の開発実績がある
現在、機械学習や深層学習(ディープラーニング)などを活用した AI 分野が注目されていますが、高度な計算や統計処理が必要な AI 分野では、AI 分野に特化したライブラリが充実している Python が欠かせません。
ライブラリが豊富
コーディングを効率よく進めるためのツールが豊富に用意されています。Python にはライブラリが豊富にあり、膨大なデータを分析する際も高速処理が可能になるため、ビッグデータの解析など、幅広い分野で活用されています。機械学習のライブラリにはscikit-learnや行列計算を行うNumPy、データの前処理に役立つ Pandas、グラフ描画に用いられる Matplotlib などがあります。
フレームワークが充実している
フレームワークとは、Webアプリケーション開発を行う際に必要となる機能や骨組みをひとまとめにしたものです。あらかじめ完成している土台に、必要最低限のプログラムを書くだけでいいので開発工程を短縮でき、書き方も統一されるため、メンテナンスも楽になります。
Python のフレームワークとして有名なものには、Django や Flask、Bottle などがあります。
インターネット上に情報が多くある
Pythonは、利用者が多く、需要が高いこともあり、インターネット上にも情報が多くあるため、何かわからないことが出ても調べれば大抵の疑問は解決できるでしょう。
Pythonの注意点
実行速度が遅い
Pythonはインタプリタ言語であり、コンパイラ言語より実行スピードは劣ります。そのため、複雑なシステムの開発や処理速度の速さが求められるゲーム開発などには向いていません。そういった場合には Java や C言語などがおすすめです。
インデントがずれるとエラーになってしまう
Python ではオフサイドルールといってインデント(空白で字下げする文字の組み方)して文の構造をわかりやすくするルールがあります。入れ子構造が深くなるほど文が右側から始まるため可読性が上がります。しかし、その一方で、インシデントを忘れたり空白の数(インデントの位置)を間違えたりした場合、機械が各ブロックを捌けずエラーが起こってしまいます。
日本語サポートが少なめ
Pythonはもともと世界的には大変人気の高い言語でしたが、Pythonが日本で利用されるようになったのは比較的最近のことです。このため、日本語によるサポートが十分に整っておらず、日本語で書かれたPython関係のサイトもJavaやC言語と比較するとまだまだ少ないという状況にあります。
Pythonでできること
Webアプリ開発
AI 開発で人気に火が付いた Python ですが、それまでもWebアプリ開発でよく用いられてきました。Pythonには高い処理能力があり、膨大なデータを扱いにも長けているので、特に大規模なプラットフォーム型サービスのバックエンド開発に使われることが多いです。冒頭でも紹介したInstagramやYouTube、DropboxなどもPythonで開発されています。
AI開発・機械学習・深層学習
Python には AI 開発に不可欠な存在となっています。SciPy、NumPyなどの統計・数学に特化したものからTensorFlowやPyTorch、Chainerといった深層学習用のものなど、AI 開発に利用できるフレームワークやライブラリも多く用意されています。代表的な機能を紹介します。
- 顔認識機能(Instagram、SNOWなど)
- 音声認識機能(Siri、Alexaなどなど)
- 文章生成機能(ChatGPTなど)
また、AI開発には膨大なデータを収集する必要がありますが、Pythonには情報収集・解析を自動化するスクレイピングをサポートするライブラリもあるのもPythonがAI開発とも相性がいいとされる所以です。
データ処理・分析・解析
PythonにはNumPyやPandas、SciPyなど、高度な計算や特殊な処理に特化したライブラリが多くあり、高い計算能力を発揮するため、データ分析にも向いています。
これらのライブラリを利用することでデータを行列表に整理したり、膨大なデータから目的のデータだけを抽出するなど、柔軟なデータ処理が可能です。
データ処理・分析・解析に特化したライブラリが充実していることもAI開発でよく用いられる理由の一つになっています。
データ収集
人工知能は膨大なデータ(ビッグデータ)を処理する必要があります。
データ処理にはクローラーが Web 上の情報を集める「クローリング」、抽出したデータを分析し格納できるデータに変換する「スクレイピング」、データを整える「データ前処理」などといった工程がありますが、Python にはそれぞれの工程をサポートするフレームワークやライブラリがあります。
スクレイピングでデータ収集を自動化することで飛躍的に業務効率を上げられます。
ブロックチェーン開発
暗号通貨「ビットコイン」の知名度が上がったことで耳にするようになったブロックチェーン業界でも Python が使われています。ブロックチェーンと開発もPythonライブラリを使えば簡単に複雑な計算もできます。
ゲーム開発
PythonにはPygameや2Dゲーム開発に特化したCocos2dなど、ゲーム開発用フレームワークやライブラリもあるのでこれらを利用すればゲームの開発もできます。
Pythonが苦手な分野
汎用プログラミング言語で、さまざまな開発に用いられるPythonですが、苦手な分野もあります。といっても開発不可能というわけではなく、どうしても開発を補助するライブラリなどの多さが関係してきます。スマホアプリ開発やデスクトップアプリ開発には不向きです。また、高速な処理を求められる大規模複雑なゲーム開発や基幹システム開発でも、処理が遅くなってしまうため、スピードを重視する場合はC言語やJavaを利用するのがおすすめです。
Pythonを使う職業
AIエンジニア
AI エンジニアは、機械学習や深層学習(ディープラーニング)を活用して機械にデータを与え、判断方法や思考を学習させることでAI(人工知能)を開発する職業です。
Webアプリエンジニア
Web アプリエンジニアは、Webブラウザで動作するアプリを開発する職業です。
データサイエンティスト
データサイエンティストとは、ビッグデータを分析することで、さまざまな意思決定の局面において、データに基づいた合理的な判断を行えるように意思決定者をサポートする職業です。
Pythonの将来性
Python はさまざまな開発に用いられる言語ですが、特に AI 分野では欠かせない存在となっています。そのため、Python を扱えるエンジニアの将来性は高いといえるでしょう。求人サイト「Indeed」で「Python 東京都」と検索すると、27,783件(2022年5月現在)ヒットするなど案件数は豊富にあることがわかります。また、今後も AI 市場の拡大に伴い、案件数も増えていくと考えられます。
Pythonが使われている企業やサービス
さまざまな開発ができる Python は身近なサービスで用いられています。なかでも代表的なものをいくつか紹介します。
Pepper
ソフトバンクが開発したロボット「Pepper」の感情生成エンジン に Python が用いられています。
Dropbox
オンラインストレージサービス「Dropbox」の約93万行に及ぶコードは全て Python で記述されています。
Instagram
写真共有サービス「Instagram」は Python のフレームワークである Django で構築されました。
YouTube
Python は世界最大の動画共有サービス「YouTube」のサーバーサイドで、アップロードされた動画の処理やデータの読み込みなど、同サービスのプラットフォームを支えています。
OpenStack
クラウド環境構築ソフトである「OpenStack」の大部分は Python が使われています。
PayPal
オンライン決済サービス「PayPal」は深層学習のライブラリ「TensorFlow」を用いて不正がないかチェックしています。
Blender
3Dグラフィックスの作成ソフト「Blender」はプログラムでキャラクターを動かし、グラフィックス効果を行う機能に Python が用いられています。
Google
Gmail や Google Maps のサーバーサイドの処理で Python が使われています。
学習方法
独学
インターネット上にある無料学習サイトや有料学習サイトを利用して独学で習得するという手軽に学びたい方におすすめの方法です。
独学ではモチベーションを維持して学習を続けなくてはなりませんが気軽に学習を始められるでしょう。
プログラミングスクール
学習している過程でわからないことが出てきた場合、教えてくれる人がいないとわからないままになってしまい、挫折の原因になるというケースもあります。
その点、プログラミングスクールを利用すれば講師に分からないことを教えてもらいながら学習を進められるため挫折しにくいです。
弊社でもプログラミングスクールを開校しましたので、興味のある方はこちらをご覧ください。