Pythonプログラムの作成や実行、エラーの修正などを効率よく進めるには、開発環境を整えることが重要です。
そこで役立つのが、Pythonの開発に特化した統合開発環境(IDE)である「PyCharm」です。
本記事では、PyCharmの概要や、実際にプログラムを作成して実行する手順、開発に役立つ基本機能など、初心者がつまずきやすいポイントも踏まえて紹介します。
PyCharmとは
PyCharmとは何か
PyCharmは、JetBrains社が開発・提供するPython向けの統合開発環境(IDE)です。
コードを書くためのエディターだけでなく、プログラムの実行やデバッグ、ファイル管理、ライブラリの追加など、開発に必要な機能をまとめて利用できます。
通常、IDEを使用せずにPythonのプログラムを実行する場合、Python本体をインストールし、テキストエディターなどでコードを記述した上で、ターミナルからコマンドを実行する必要があります。
しかし、この方法では、ファイルの管理やエラーの確認、実行環境の設定などを個別に行わなければなりません。
一方、PyCharmを利用すると、コードの編集から実行、エラーの調査までを同じ画面で進めることができます。
その他にも、コードの入力補完機能や、ブレークポイントの設定によるプログラムの一時停止など、効率よく開発を進めるための様々な機能が搭載されています。
複数のファイルを扱うアプリケーション開発でも、プロジェクト全体を管理しながら作業できる点がメリットです。
無料で使える範囲と有料版との違い
PyCharmには無料で利用できる機能と、有料サブスクリプションで利用できる高度な機能があります。
無料でも、Pythonファイルの編集や実行、基本的なデバッグ、仮想環境の利用など、一般的なPython開発に必要な機能を利用できるため、学習用のプログラムや小規模なスクリプトを作成するのであれば、無料の範囲から始めても十分活用できます。
一方、有料サブスクリプションでは、Web開発やデータベース操作など、より高度な開発を支援する機能が提供されます。
Webフレームワークを利用した開発や、データベースとの連携をIDE上で効率よく進めたい場合には、有料機能が役立つ場合があります。
なお、以前のPyCharmは無料のCommunity版と有料のProfessional版に分かれていましたが、2025.1以降は1つの「PyCharm」に統合されました。
Community版で使えていた機能は、コア機能として引き続き無料で利用できます。
料金などの詳しい情報については、公式の料金ページを参考にしてください。
VS Codeとの違い
Pythonの開発環境としては、PyCharmのほかに「Visual Studio Code(VS Code)」も広く利用されています。
どちらもPythonのコード編集や実行、デバッグなどに対応していますが、開発環境としての設計思想や機能の提供方法に違いがあります。
PyCharmは、Python開発に特化した統合開発環境(IDE)です。
コードの編集や実行だけでなく、デバッグやコード解析、リファクタリングなど、開発に必要な機能が標準的にまとまっています。
プロジェクト全体を解析してコードの問題を検出したり、変数や関数の参照関係を調べたりできるため、規模の大きなPython開発にも向いています。
一方、VS CodeはMicrosoftが提供する汎用的なコードエディターです。
標準状態では比較的シンプルな編集環境ですが、拡張機能を追加することで、Pythonをはじめとしたさまざまなプログラミング言語に対応できます。
必要な機能を自分で選んで追加できるため、Python以外の言語も扱う場合に便利です。
両者の主な違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | PyCharm | VS Code |
|---|---|---|
| 基本的な位置付け | Python向けの統合開発環境 | 汎用コードエディター |
| Pythonへの対応 | 標準機能として統合 | 拡張機能で対応 |
| コード補完 | 標準搭載 | Python関連の拡張機能で対応 |
| デバッグ | 標準機能として統合 | Python Debuggerなどで対応 |
| コード解析・修正 | 高度な解析やリファクタリングに対応 | 拡張機能などを組み合わせて対応 |
| 拡張性 | プラグインで機能を追加 | 豊富な拡張機能でカスタマイズ |
| 対応言語 | Pythonを中心に複数の言語に対応 | 幅広いプログラミング言語に対応 |
| 無料での利用 | 基本機能は無料 | エディター本体や基本機能は無料 |
PyCharmは、Python開発に必要な機能がまとまった環境を利用したい人や、プロジェクト全体を管理しながら本格的な開発を進めたい人に向いています。
一方、VS Codeは、Python以外の言語も扱う人や、必要な拡張機能を選んで自分好みの開発環境を構築したい人に向いています。
PyCharmをインストールする
公式サイトからダウンロードする
PyCharmを利用する際は、公式サイトからインストーラーをダウンロードし、パソコンにインストールします。
ダウンロードページでは、利用しているOSに合わせて自動でボタンが表示されるので、クリックしてインストーラーをダウンロードしましょう。
インストーラーでインストールする
ダウンロードが完了したら、インストーラーを起動して画面の指示に従ってインストールします。
(具体的な操作や表示される項目は、OSやインストーラーのバージョンによって異なります)
Windowsでは、インストール先のフォルダーやショートカットの作成などを設定する画面が表示される場合があります。
必要に応じて項目を選択し、インストールを進めましょう。
macOSでは、ダウンロードしたディスクイメージなどを開き、案内に従ってPyCharmをアプリケーションフォルダーへ配置する方法が一般的です。
初回起動の設定を行う
インストールが完了したら、PyCharmを起動します。
初回起動時には、設定のインポートや利用規約の確認などが求められる場合があるため、画面の案内に従って初期設定を進めましょう。
初期設定が終わると、プロジェクトの作成や既存プロジェクトの読み込みを行う画面が表示されます。
ここまで進めば、インストール作業は完了です。
日本語で表示する
PyCharmの画面が英語で表示されている場合は、設定から日本語に切り替えられます。
日本語の言語パックはPyCharmに同梱されているため、別途プラグインを探してインストールする必要はありません。
- Ctrl + Alt + S(macOSでは⌘ + ,)を押して、設定画面を開く
- 「Appearance & Behavior」→「System Settings」→「Language and Region」を選択する
- 「Language」の一覧から「日本語」を選択して設定を保存する
表示が切り替わらない場合は、PyCharmを再起動してください。
また、日本語を選択できない場合は、設定の「Plugins」→「Installed」で日本語の言語パックが無効になっていないかを確認しましょう(JetBrains公式ヘルプ)。
【実践】最初のプロジェクトを作って実行する
新しいプロジェクトを作成する
まずは、プロジェクトを新規作成しましょう。
サイドメニューから「プロジェクトとファイル」ウィンドウを開き、「新規…」→「新規プロジェクト…」を選択して作成画面を表示します。
作成画面では、プロジェクトの保存先やインタープリターのタイプを指定し、必要な場合はパスの設定なども合わせて行います。
インタープリターのタイプによって設定内容は多少変化するため、選択したタイプに合わせて必要な項目を入力してください。
Pythonファイルを作成してコードを書く
プロジェクトの作成が完了したら、Pythonファイルを作成してコードを記述してみましょう。
作成したプロジェクトには、デフォルトで「main.py」というファイルが作成されている場合があるため、該当のファイルを編集する形でも問題はありません。
別途、新しくファイルを作成する場合は、プロジェクトウィンドウ上部の +ボタンを押して、「Pythonファイル」を選択しましょう。
今回はサンプルとして、以下の簡単なコードをファイルに記述します。
if __name__ == '__main__':
message = "Hello, PyCharm!"
print(message)プログラムを実行する
コードを入力したら、プログラムを実行して動作を確認してみましょう。
画面上部や、コードの左横に表示されている矢印アイコンをクリックすることで、該当のファイルを実行することができます。
正常に実行されると、画面下部などにある実行ツールウィンドウに、次のような結果が表示されます。
実行結果が表示されない場合は、実行対象のファイルが正しいか、Pythonインタープリターが設定されているか、コードに入力ミスがないかなどを確認しましょう。
エラーを見つけて直す
プログラムを作成していると、コードの入力ミスや想定外の動作によって、エラーが発生することがあります。
PyCharmには、コードの問題を検出して警告を表示したり、実行時に発生したエラーの内容を確認したりする機能が備わっています。
まずは、先ほど作成したmain.pyのコードを、次のように変更してみましょう。
if __name__ == '__main__':
message = "Hello, PyCharm!"
print(mesage)このコードでは、定義した変数名と、出力時に入力している変数名が異なっています。
変数名が一致していないため、実行するとNameErrorが発生するケースです。
PyCharmでは、コードを入力した段階で問題が検出され、該当箇所に波線などの目印が表示される場合があります。
また、実行時にエラーが発生すると、実行ツールウィンドウにエラーの種類や発生した行番号、原因を調べるための情報が表示されます。
エラーが発生した場合は、エラーメッセージなどから問題の種類と発生箇所を確認し、該当するコードを修正することが基本です。
PyCharmの警告やエラー表示を活用することで、問題の原因を特定しやすくなります。
開発が楽になる基本機能
デバッガーで変数の中身を確認する
デバッガーは、プログラムを一時停止させながら処理の進み方や変数の値を確認できる機能です。
エラーの原因を調査するときや、処理が想定どおりに進んでいるかを確認するときに役立ちます。
行番号の左側をクリックすると、ブレークポイントと呼ばれる目印が設定されます。
ブレークポイントは、デバッガーでプログラムを一時停止させる位置を指定するものです。
この状態で、「実行」ボタンではなく「デバッグ」ボタンを押すことにより、プログラムを一時停止して変数の中身を確認することができます。
デバッガーを使うことで、プログラムの実行結果だけでは分かりにくい問題も、処理の途中経過から原因を調べられます。
特に、条件分岐や繰り返し処理が複雑になった場合に便利な機能です。
パッケージを追加する
PyCharmでは、プロジェクトで使用するPythonインタープリターに対して、パッケージを追加・管理することができます。
追加方法には、以下の3つがあります。
- 「Pythonパッケージ」ウィンドウから追加する
- Pythonインタープリターの設定画面から追加する
- ターミナルからpipコマンドを実行してインストールする
ターミナルにあまり慣れていないという方や、視覚的な操作の方が扱いやすいという方は、Pythonパッケージウィンドウやインタープリターの設定画面から追加するといいでしょう。
名前を一括で変更する
プログラムの規模が大きくなると、変数名や関数名を変更する際に、複数のファイルを修正しなければならないことがあります。
その際に、手作業での変更を行うと、一部の修正を忘れたり、関係のない文字列まで変更してしまったりする可能性があります。
PyCharmには、コード内の名前と、その名前を参照している箇所をまとめて変更する「Rename」機能があります。
変更したい変数名の上にカーソルを置き、Shift + F6を押すことで、変更画面を開けます。
この機能は、一般的な文字列の置換とは異なり、PyCharmがコード上の参照関係を解析して、変更対象となる変数や関数などを判断して修正するため、意図しない箇所まで変更するリスクを減らせます。
よく使うショートカットキー
PyCharmには、コードの編集やファイルの検索、実行などを効率よく行うためのショートカットキーが用意されています。
その中でも、代表的なショートカットキーをいくつか紹介します。
| 操作 | Windows/Linux | macOS |
|---|---|---|
| アクションを検索する | Ctrl + Shift + A | ⌘ + Shift + A |
| ファイルや設定などを検索する | Shiftを2回押す | Shiftを2回押す |
| コードの整形 | Ctrl + Alt + L | ⌘ + Option + L |
| 行をコメントアウトする | Ctrl + / | ⌘ + / |
| 名前の一括変更 | Shift + F6 | Shift + F6 |
| デバッグ実行 | Shift + F9 | ⌃ + D(キーマップによる) |
| 最近使用したファイルを開く | Ctrl + E | ⌘ + E |
まずは検索や実行など、日常的に使う操作から取り入れていくとよいでしょう。
初心者がつまずきやすいポイント
Pythonのインタープリターが見つからない
PyCharmでプログラムを実行しようとした際に、Pythonインタープリターが見つからない、または実行環境が設定されていないというエラーが発生することがあります。
インタープリターとは、Pythonのコードを読み取り、実行するためのプログラムです。
PyCharm自体をインストールしただけでは、実行環境が自動的にすべて整うとは限りません。
この問題が発生した場合は、まずPython本体がインストールされているかを確認しましょう。
インストールされていない場合は、Python公式サイトから利用するOSに対応したバージョンをダウンロードしてインストールします。
なお、WindowsとmacOSでは、PyCharmの新規プロジェクト作成画面からPythonをダウンロード・インストールすることもできます。
次に、PyCharmでプロジェクトのインタープリターを設定します。
設定画面を開き、Pythonインタープリターの項目から、利用するPython環境を選択してください。
既存の環境が一覧に表示されない場合は、新しいインタープリターを追加するか、Python実行ファイルの場所を指定しましょう。
設定後は、選択したインタープリターでプログラムを実行できるか確認してください。
インストールしたパッケージが読み込めない
pipなどでパッケージをインストールしたにもかかわらず、PythonファイルでModuleNotFoundErrorが発生することがあります。
このエラーは、Pythonが指定されたモジュールを見つけられない場合に発生します。
よくある原因の一つが、パッケージをインストールした環境と、PyCharmでプログラムを実行している環境が異なることです。
まずは、PyCharmのプロジェクトで選択されているPythonインタープリターを確認しましょう。
その上で、対象の環境にパッケージがインストールされているかを確認してください。
また、インストールしたパッケージ名と、Pythonコードで指定するモジュール名が異なるケースもあります。
パッケージの公式ドキュメントを確認し、正しいインポート方法で記述しているかもチェックしましょう。
お試し期間が終わって一部の機能が使えなくなった
PyCharmでは、インストール時にPro機能を試せる30日間の無料トライアルが自動で提供されています。
トライアル期間中は有料の高度な機能を利用できますが、期間終了後は無料のコア機能と有料のPro機能の扱いが変わります。
トライアル終了後も、PyCharmの基本的な機能を無料で使い続けることは可能です。
一方、Proサブスクリプションが必要な機能は、利用を継続するために有料ライセンスが必要になります。
そのため、試用期間が終わって機能が使えなくなった場合は、まず、その機能が無料のコア機能に含まれるものなのか、有料のPro機能に該当するものなのかを確認しましょう。
有料機能が必要かどうかは、開発内容によって異なります。
学習や小規模なスクリプトの作成が中心であれば、まずは無料機能で開発を続け、必要になった段階でProへの移行を検討するとよいでしょう。
よくある質問
Q. PyCharmを使うには、Python本体のインストールも必要ですか?
A. はい、必要です。PyCharmはあくまでコードの編集や実行を支援する開発環境のため、実行環境そのものとは異なります。
Python自体を初めて利用する場合は、Python本体のインストールとインタープリターの設定をセットで進めましょう。
なお、WindowsとmacOSでは、PyCharmの新規プロジェクト作成画面からPython本体をダウンロード・インストールすることもできます。
Q. PyCharmは無料で使い続けられますか?
A. PyCharmのコア機能は無料で利用可能です。
自分が利用したい機能が無料の範囲に含まれるかを事前に確認するといいでしょう。
Q. PyCharmのCommunity版はなくなったのですか?
A. PyCharm 2025.1以降、Community版とProfessional版は1つの「PyCharm」に統合されました。
Community版で使えていた機能はコア機能として引き続き無料で利用でき、Pro機能を使う場合のみ有料のサブスクリプションが必要です。
Q. 初心者でもPyCharmを使いこなせますか?
A. はい、可能です。PyCharmには、コードの入力補完やエラーの検出、プログラムの実行など、学習を支援する機能が備わっています。
まずは簡単なコードの記述から始め、エラーの確認やデバッガーの利用など、必要に応じて機能を覚えていくと、無理なく使い方を身につけられます。
Q. PyCharmとVisual Studio Codeは、どちらを使うべきですか?
A. どちらもPython開発に利用できますが、それぞれ特徴が異なります。
Python開発に特化した環境を利用したい場合はPyCharm、複数言語の利用や必要に応じた機能拡張を重視したい場合はVS Codeが選択肢になります。
どちらが優れているかは開発内容や使い方によって異なるため、まずは無料で利用できる範囲から試し、自分に合った開発環境を選ぶとよいでしょう。
まとめ
PyCharmは、Pythonのコード編集から実行、デバッグまでを一つの環境で行える統合開発環境です。
無料の範囲でも基本的な開発は十分に行えるため、まずは簡単なPythonプログラムを実行するところから始めてみるといいでしょう。