SDK(ソフトウェア開発キット)とは?APIとの違いやメリット、使い方を解説

  • 2023.06.02
       
SDK(ソフトウェア開発キット)とは?APIとの違いやメリット、使い方を解説

昨今、Webアプリの開発者や Webサービスの運営・提供企業の間では「SDK」の導入でアプリ開発や機能拡張を行う動きが活発化しています。
従来は Webアプリや Webサイトを開発する場合や既存システムに特定の機能を追加する場合は、一からソースコードを書き、組み立てる必要がありました。最近では Webアプリや Webサイトの作成ツールが充実しており、専門知識がなくても気軽に自社サイトやアプリを作れるようになりましたが、一方でこのようなツールだと細部のカスタマイズができなかったり、実装したい機能がサポートされていなかったりと、融通の利かないというデメリットもあります。
その際覚えておきたいのが、簡単に必要な機能を自社サイトやアプリ内に組み込める「SDK」です。さまざまな SDK を上手く活用すれば自社サイトやアプリの開発コストを大幅に削減できます。
本記事はそんな SDK の基礎知識からAPIとの違いやメリットなどについて解説します。

SDKとは?

開発コストを軽減し簡単に自社サービスに機能追加できるSDK
SDK は、「Software Development Kit」の略称で、ソフトウェアの開発に必要なプログラムや API、サンプルコード、開発ドキュメントなどをひとまとめにしてパッケージ化したものです。日本語ではソフトウェア開発キットとも呼ばれ、主に Webアプリや Webサービスの開発で用いられています。
冒頭でも説明しましたが、これまで Webアプリや Webサービスの開発や機能追加には、開発者が一からソースコードを書き、プログラムを構築する必要がありました。しかし、それには高度なプログラミング知識が必要で作業にも膨大な時間がかかってしまい、開発者にとって大きな負担となっていました。また、データが重くなり、アプリケーションの稼働速度の低下に繋がるといった問題もありました。
その点、SDK にはプログラムやAPI、サンプルコードやドキュメント、ライブラリなど、開発に必要なツールがそろっているため、開発者はソースコードの作成やプログラムの構築などにかかる工数を削減しながらも、欲しい機能を簡単に自社サービスに実装できます。
たとえば、ライブ配信アプリを開発する場合、ライブ配信機能に特化した SDK を自社アプリのプログラムに組み込むことで、簡単に実装できます。

さまざまなソフトウェアベンダーがSDKを提供
OS メーカーやプログラミング言語のメーカーなどさまざまなソフトウェアベンダーが自社製品とほかのアプリケーションを簡単に連携し、自社のアプリケーションをより容易に利用してもらうために独自の SDK を提供しています。
世界中で利用されている AWS においても、希望する開発言語やプラットフォームで AWS のサービスにアクセスし、管理できるよう 9 種類の SDK が用意されています。

SDKに含まれるもの
SDK は開発をサポートするさまざまなツールを含んでいます。製品によって何が含まれるかは異なりますが、代表的なものを紹介します。

次に記載するものが含まれていることが多いです。

  • プログラムの作成後に用いるコンパイラや実行環境
  • デバッグ (バグの発見・修正) をサポートするデバッガなどの開発ツール
  • プログラムを利用するのに必要となる API
  • ライブラリやクラスファイル、モジュール、ドライバなどの既製プログラム
  • SDK やAPI、通信プロトコルなどの仕様を記載したドキュメントファイル
  • サンプルコードを記載したプログラムファイル

電子基板や組み込みシステムなどの場合、接続ケーブルや装置、部品といったハードウェアが添付されることもあります。

SDKはどのくらい使われている?
SDK 管理のプラットフォームを提供する SafeDK が実施した調査によると、2018 年時点で日本のモバイルアプリは平均 18 個の SDK を使用しているとのことです。この使用数の多さから、アプリの作成に SDK を用いることは一般的であることがうかがえます。
参考:SDK Guide for Mobile Apps: A handbook of every mobile SDK in the industry

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APIとの違い

SDK と API は同じような用途で使用されるツールですが、役割が異なります。詳しく見ていきましょう。

どちらも複数の異なるアプリケーションを連携させることで、開発者が一から作業することなく、簡単にソフトウェアの開発や機能の追加ができるといった共通部分もありますが、両者の役割は異なります。
しかし、API はあくまでアプリケーションの機能のインターフェースのみを呼び出すツールであるため、実装するにはほかにも多くの工程が必要になります。それに対し、利用者が開発しやすいよう総合的にサポートするのが SDK です。
SDK は API を簡単に使用できるように API やライブラリ、サンプルプログラムなどのツールをひとまとめにしてパッケージ化されており、ものによっては API や API への問い合わせデータを作成やデータフォーマットのチェックを行うツールが含まれています。

API (アプリケーションプログラミングインタフェース) は、ソフトウェアの一部を公開・提供することで、ほかのソフトウェアやプログラム、Webサービスとの連携を促すもので、機能の一部を自社アプリやサイトに組み込みたい場合に用いられます。
たとえば、自社のWebサイトに店舗の位置をグーグルマップ形式で載せたい場合、「Google MapsのAPI」を連携させることで実装できます。

SDKのメリット

SDK を使うことでどのようなメリットがあるか説明します。

Web開発者の負担を軽減する
SDK を利用する最大のメリットは、ソフトウェア開発や機能追加を効率化できることです。
繰り返しになりますが、SDK には開発に必要なさまざまなツールが含まれており、これを利用することで、開発者は一からコードを書いたり、プログラムを構築したりする手間を省けます。
SDK の提供する機能を簡単に自社サービスに組み込めるため、開発コストも大幅に削減できるでしょう。

Webサイトの読み込み速度の低下を防ぐ
自社サイトやアプリにさまざまな機能を追加するうえで気になるのが、読み込み速度の低下です。全ての機能を自ら開発すると膨大な時間がかかるのはもちろんのこと、データが重くなることで Webサイトの読み込み速度の低下にも繋がります。
このように、データが重くなったり非効率な設計になったりすることで読み込み速度が落ちてしまうと、利用者の満足度が下がり、離脱率や機会損失に繋がってしまいます。
その点、SDK は処理設計が洗練されているほか、セキュリティにも配慮されているものが多く、自社で一から開発するより、Webサイトの読み込み速度の低下を抑えられるでしょう。

さまざまな機能を一括で実装できる
多くの SDK では、一つのパッケージに複数のさまざまな機能が含まれているため、自社サービスに多くの機能を一括で追加することもできます。
自社サービスを開発するうえで、分析機能や登録・認証機能、決済機能、エラー検知など、さまざまなニーズが生じますが、これらの欲しい機能がまとまった SDK を利用することで、より効率的に Webサイトやアプリの開発を行えるため、開発コストの削減に繋がります。
また、SDK を併用することで開発の幅を広げることもできます。

SDKを提供側のメリット
SDK を開発・公開する提供側の企業にもいくつかメリットがあります。
そのなかでも最も大きなメリットとして、自社サービスを利用してもらいやすくなることが挙げられます。開発者が理解し易いようドキュメントを整備し、ライブラリを準備すれば、利用者数も増えるでしょう。
また、多くの開発者に利用してもらうことで機能に対する意見をもらえたり、バグの発見を教えてもらえたりするので、それが品質向上につながり、結果的に長期的に利用される可能性も高まります。

SDKの代表例

さまざまなソフトウェアベンダーから SDK が提供されていますが、なかでも代表的な SDK のサービスを紹介します。

Windows SDK
Windows SDK は Microsoft社が提供する WindowsOS で動作するアプリケーションを開発するのに必要になるツールをまとめた SDK です。ドライバやデバッグツール、動作確認に利用できるテストツールなど、さまざまな内容が含まれており、Windowsアプリ開発には必須のツールといえます。単独でも提供されていますが、同社からリリースされている開発ツール「Visual Studio」にも Windows SDK が含まれています。
用途によっては「WDK (Windows Driver Kit) 」や「DirectX SDK」と併用した方がいい場合もあるため、事前に調べておきましょう。

iOS SDK
iOS SDK は Apple社が提供する、iPhone や iPad といった iOS端末で動作するアプリケーションを開発するのに用いられる SDK です。iOS SDK は単独では提供されておらず、MacOS や iOS 向けのアプリケーションの統合開発環境 (IDE) である「Xcode」に含まれています。

Android SDK
Android SDK は、Google社が提供する Android OS 上で動作するアプリケーション開発する際に必要になる SDK で、Androidアプリケーション開発用のツールをまとめた統合開発環境「Android Studio」からダウンロードできます。
2008 年に最初のバージョンがリリースされて以降は、Android のバージョンアップに合わせて更新されていますが、Android SDK は AndroidOS だけでなく WindowOS や MacOS でも利用可能な環境が用意されています。

SDKの使い方

SDK  に含まれる部品と同様に使い方も SDK によってさまざまですが、次のような手順で利用できる状態になります。
① SDK の提供元からインストーラをダウンロードする
② インストーラを実行する
③ インストール完了後、セットアップを行う
※SDK のなかには、SDK に含まれる API を有効にすることで利用できるものもあります。
※SDK は API とは異なり、ビルドする必要があります。

例として、Android のアプリケーションを開発する Android SDK を使用してみます。
まず、以下のページでAndroid Studio をダウンロードします。
https://developer.android.com/studio

次に、ダウンロードする SDK を選び、ガイドに沿ってインストーラをダウンロードします。
Windows 版であれば、「android-studio-2021.3.1.17-windows.exe」を選択しましょう。
ここで「r2021.3.1.17」は SDK のバージョン番号であり、ダウンロードのタイミングによって異なります。

そして、ダウンロードしたファイルを起動し、ウィザードに従ってセットアップを行います。
インストールが終わったら「Finish」を押し、Android Studio のスタート画面が表示されれば完了です。Android SDK Manager の起動や環境変数の設定を合わせて行いましょう。

SDKの費用

SDK の費用は利用するサービスによって異なりますが、無料の SDK も数多くあります。また、有料のものでも、サーバ通信量や接続回数などに応じた従量課金制を採用しているサービスが多く、SDKを利用した開発自体は無料である場合が多いです。

     

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