DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や重要性、導入事例をわかりやすく解説

  • 2024.02.01
       
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や定義をわかりやすく解説

DXとは?

DXの意味

DX は、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、「ITの技術の活用によって、人々の生活を多方面で変革をもたらす」という概念です。
これは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が論文の中で初めて提唱したといわれています。
昨今では、「最新のデジタル技術を駆使することでビジネスモデルや業務プロセスを変革する」といった意味合いのビジネス用語になっています。
ただし、産業や組織の視点によって多様な解釈が存在します。

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なぜDTではなくDXと表すのか

デジタルトランスフォーメーションの英語表記は「Digital Transformation」ですが、略称は「DT」ではなく「DX」です。
その理由は、英語圏ではよく「Trans」を「X」と略すことがあり、そこから来ています。

ビジネスシーンにおけるDXの定義

DXの言葉の意味を解説しましたが、実際にビジネスシーンに話を置き換えてみるとどういった捉え方になるのでしょうか。
2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」にて DX を次のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データ(情報の集まり)とデジタル技術を活用することで、顧客や社会のニーズに沿って製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、また、業務そのもの、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

この定義から単純にデジタル技術を駆使し、新たなビジネスモデルや商品、サービスをつくることが DX であるとは言えないことになります。

デジタル化とDX

DX と聞くと、デジタルに置き換えればいいと考えがちですが、実はDX=デジタル化ということではありません。
デジタル化とは、「デジタルに置き換えること」であり、従来の設備や仕組みにデジタル技術を活用するという点では DX と同じですが、デジタル化の場合、目的はあくまで「業務の効率化」や「コストカット」です。
その一方、DX は、前述した DX推奨ガイドラインにあるように、デジタル技術の活用によってビジネスモデルや製品、サービスに変革をおこすものです。
つまり、デジタル化は DX の手段であり、DX はデジタル化の先にある目的であると考えられます。

デジタイゼーション、デジタライゼーションとの違いと関係性

DX と一緒に語られることも多い「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」はどちらも日本語に直訳すると「デジタル化」という意味ですが、それぞれ意味合いが異なります。
それぞれの意味や関係性を通して DX の本質を捉えましょう。

デジタイゼーションとは?

ドキュメントや申請手続きを電子化したり、今まで人がやっていた業務を自動化するなど、「業務効率の向上を目的とし、既存のビジネスプロセスにデジタル技術を取り入れること」を指します。

デジタライゼーションとは?

自動車の販売をカーシェアサービスへ転換したり、ビデオ・DVDのレンタルからオンライン上での動画配信サービスに転換したりと、「デジタル技術を活用することでビジネスプロセス自体を変革し、新たなビジネスモデルを生むこと」です。

デジタイゼーション/デジタライゼーション/デジタルトランスフォーメーションの関係

デジタイゼーションとデジタライゼーションは、局所的・全域的なデジタル化という大きな違いがありますが、“人々の生活をより良いものへと変革する”DXを実現していくのに必要なステップと言えます。
それぞれの言葉をさらにわかりやすくするために、カメラを例にあげ、ビジネスにおける DX実現の流れを以下に示しました。

DX実現のステップ

①「デジタイゼーション」で業務を効率化
例)フィルムカメラからデジタルカメラに転換する

②「デジタライゼーション」で新たなビジネスモデルを創出
例)写真現像の工程が省け、オンライン上で写真や動画などのデータを送受信するシステムが生まれる

③その結果、「DX」が実現(競争下で優位性を確立でき、社会的に影響を与える)
例)写真や動画などのデータを用いた新たなビジネスやサービスが生まれる、インターネットを通じて、写真や動画をシェアできるようになる

なぜ今、DXが注目されているのか?

DX がここまで注目されるようになった背景には、経済産業省が2018年にまとめた「DXレポート」の中で提唱された「2025年の崖」と呼ばれる現象があります。
「2025年の崖」とは、既存のシステムが抱える問題によって、2025年を節目として、日本の多くの企業が直面すると予測される危機のことです。
DXによるとによると、データをうまく活用できない場合、2025年~2030年の間に日本の経済に年間12兆円という莫大な額の損失が出る可能性もあると示されています。
既存システムの問題とは、システムが事業部門ごとに構築されていることで部門間の連携や企業全体でのデータ活用ができないことや、過剰なカスタマイズによってシステムが複雑化・ブラックボックス化していることなどです。
この課題を解決しないと、いくら最先端のデジタル技術を導入したところで、飛躍的な効果は得られません。
それだけでなく、データをうまく活用できず、DX を実現できないと、市場の変化についていけなくなり、デジタル競争下で生き残れなくなってしまいます。
また、複雑化してしまった既存のシステムを使い続けることで高い維持費もかかるうえに、保守運用の担い手不足によって、サイバーセキュリティや事故・災害時のシステムトラブル、データ滅失・流出が起こるリスクなどが懸念されています。
しかし、DXレポートには、2025年までに、複雑化・ブラックボックス化した既存システム(レガシーシステム)を見直してDXを実現することで、2030年の実質GDP を130兆円超に押し上げるとも記されています。
つまり、DX の実現が日本の国際的な市場における競争力の強化に直結しているのです。
政府機関による民間企業への言及は異例のケースであることやターニングポイントとなる2025年が刻々と迫りつつあることから DX は日本企業の最重要課題の一つとなっているのです。

DXの現状

ここからは日本の企業における DX 推進の現状について見ていきましょう。

経済産業省が発表した DXレポート2 によると、DX推進指標の自己診断を行った約500社の企業のうち、95%は「DXにまったく取り組んでいない」または「取り組み始めた段階」であり、DX 推進が進んでいない現状が浮き彫りになりました。

さらにいうと、DX推進指標の自己診断を行った企業は約500社と、日本の企業の一部にすぎず、DX 推進を意識できていない企業がほかにも多く存在することがわかりますね。

また、中小企業に至っては DX人材の不足から、業務のデジタル化すら出遅れているという現状もあります。

DX推進に必要なこと

DX推進を担当する人材の育成

DX 推進には、DX人材の存在が不可欠です。
自社に合ったビジネス戦略を立て、意思決定を行う必要があるため、デジタル技術や先進技術を使いこなすだけでなく自社のビジネスに精通している必要もあります。

DXでなにを実現したいのかを明確にする

DX は単に業務をデジタル化すればいいというものではありません。それよりも一歩先の「デジタル化によって企業全体を変革し、社会のニーズに合った新しい価値を生み出す」というのが DX の本質的な目的があります。
そのためには、自社について徹底した分析を行い、課題やなにを実現したいのかという方向性を見つけ、自社に合った変革を行わなければただのデジタル化で終わってしまいます。
このようなビジョンやビジネス戦略にまで踏み込むには、経営層による積極的な DX推進も重要です。

DXを推進するのに活用できるテクノロジー

DXの推進に向けて近年活用が進んでいるデジタル技術のなかで、代表的なものを紹介します。

AI(人工知能)

Artificial Intelligence の略称で、機械が大量のデータからパターンを学習し、高度な判断や予測をする技術です。
DXでは音声認識や画像認識などに活用されます。

AR

Augmented Reality の略称で、日本語訳では拡張現実です。
ポケモンGOなどのスマートフォンアプリのゲームでも活用されている技術です。
DXでは、例えば工場や生産現場といったマニュアルを手で持ちながらの作業が難しい場合、AR搭載の眼鏡を装着すれば、目の前にマニュアルが出るため、両手での作業が可能になります。
また、スマートフォンのカメラ越しで、商品があたかもそこにあるかのように実寸大で表示することも可能で、サイズ感の確認や360度自由な視点での商品チェックが可能です。

VR

Virtual Realityの略称でまるで仮想現実に入り込んだような体験を提供できる技術です。
DXでは、ゴーグルをかければ実際に自社商品を陳列棚に並べた画像が表示され、パッケージデザインの見栄え確認の際に活用されています。

IoT

Internet of Things(モノのインターネット)の略で、今までインターネットに繋がっていなかったものをインターネットに接続することで情報を集める技術です。
IoTは幅広い分野で活用されており、身近な例としては自動車運転やスマート家電などが挙げられます。
IoTによって現実世界のさまざまな情報をリアルタイムに収集でき、ビッグデータとして蓄積していけます。

クラウド

クラウドとは、サーバやソフトウェア、ストレージなどを所有することなく、インターネットなどのネットワーク経由でサービスやシステムを利用できる技術のことです。
自ら所有・保守・運用する必要がなく、従来の所有するという方式である「オンプレミス型」のシステムと比べ、初期費用や運用コストを削減できます。

オンプレミスとは?クラウドとの違い、比較、選び方

ビッグデータ

「量」「種類」「発生頻度・更新頻度」の3つで形成されたデータを指します。
例)スマートフォンから得た位置情報や検索履歴などを集約したデータ

DXでは、データを分析し活用すれば、スピード感をもって意思決定が可能になり、そこから得たデータを活用すれば新しいビジネスモデルを構築することもできます。

5G

5G(5th Generation/第5世代移動通信システム)は、次世代の通信インフラとして注目されている技術で、日本では2020年から5Gの商用化が開始されています。
「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」を特徴としており、従来の 4Gと比べ、大容量で高速なデータ通信、および従来よりも多くの端末に同時接続ができます。

RPA

RPA(Robotic Process Automation(ロボットによるプロセスの自動化)は、本来、人がパソコンで行うデータ入力やデータ集計、定型文メールの作成・送信といった決まった作業をソフトウェアロボットが代わりに行うといった自動化技術です。
RPAの導入により、スタッフのリソースをコア業務に充てることで、企業全体の生産性向上につなげられます。

企業のDX導入事例

メルカリ

従来のインターネット上のフリマサイトは、基本的にPCでの利用で、さらに購入者や出品者も個人情報を出すことが前提となっており、ハードルが高いと感じるユーザーが多くいました。
しかし、メルカリはスマホアプリ上で手軽に出品でき、匿名でのやり取りできるサービスを提供し、一気に普及し、定着しました。
ネット上で取引を完了できるなど、個人間の商品の売買を手軽にした功績は大きいでしょう。

マイクロソフト

それまでは切り売り型だった Office をクラウドサービスとして提供したことで、顧客にとっても利便性が向上しました。
また、サブスクリプション型を展開することで新しい層の取り込みにも成功しました。

Netflix

映画や音楽の DVDを顧客の自宅に届けるサービスを行っていたNetflixは、独自のプラットフォームを構築し、動画配信サービスという新たなビジネスモデルに転換し、これまで蓄積してきた顧客のデータを活かしたレコメンド機能の設置しました。また、データ分析を駆使し、サブスクリプション型の動画配信サービスとして大きく躍進しました。

日本交通

タクシー事業を展開する「日本交通株式会社」は、時期や地域ごとにタクシーの需要が変動を把握できず、適正に配車できなかったため稼働率が上がらないという課題に対してAIを活用した配車予測システム「AI配車」の開発によって交通機関の状況(事故や遅延など)やイベント情報、気象情報、地域、時間など、多様なデータを分析するシステムを開発し、タクシーの需要予測が最適化によって解決に導きました。
それによって、地域によって適正な配車ができ、稼働率の向上に成功しました。
また、タクシー配車アプリ「GO」をリリースし、端末上で乗車位置やタクシー会社の指定のみで配車できるようになったことで、顧客満足度の向上にもつながりました。

終わりに

ここまで、DXについて意味や定義、企業の導入事例などを解説してきましたがいかがでしたか?
テクノロジーの進化に伴い、これまでもDXの必要性は叫ばれていました。
さらに、昨今の新型コロナウイルスの影響で、オンライン上での購買や対話など、対面で行ってきたことがデジタル上で完結する流れが加速してきました。
DXは移り行く時代の流れに取り残されてしまうのか、新たな時代で市場を席巻していくかは多くの企業にとっての分岐点になる取り組みともいえるでしょう。

     

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