データベーススペシャリスト試験とは?
データベーススペシャリスト試験とは、IPAの実施する国家試験「情報処理技術者試験」のひとつです。
データベーススペシャリスト試験は、情報処理技術者試験のなかでも最難関となるレベル4に位置付けられる難易度の高い資格で、取得が難しい分、IT業界内でも認知度や信頼度が非常に高く、取得することでデータベースに関する高度な知識や技能を証明できる資格です。
近年、IT化が進むにつれ、サービスが増え、取り扱うデータも増えました。データは高い価値を持つ資源であり、「データがものをいう」というほど、膨大なデータをいかにビジネスに活かせるかで企業活動が左右されるとして、ビッグデータ技術の重要度が高まっています。それに伴い、データの管理、高品質なデータベースシステムの構築、データの活用などを行うデータベース管理者やインフラ系エンジニアなど、ビックデータを扱える人材の需要が高まっています。そして、こういった業務に従事する人や目指す人向けに最適な資格がこの「データベーススペシャリスト試験」です。
データベーススペシャリスト試験の難易度は?
[試験区分]
難易度が高いと言われるデータベーススペシャリスト試験ですが、実際にはどうなのか見ていきましょう。
まず、IPAが定めるレベル区分ですが、データベーススペシャリスト試験は、その最上位にあたるレベル4に分類されます。
では、次に、合格率と受験者・合格者の年齢について見ていきましょう。
受験者数・合格者数・合格率
以下の表は、直近5回分の受験者数・合格者数・合格率・合格者平均年齢を表した表です。
受験者数 | 合格者数 | 合格率(%) | |
平成30年度春期 | 11,116 | 1,548 | 13.9 |
平成31年度春期 | 11,066 | 1,591 | 14.4 |
令和2年度10月 | 6,536 | 1,031 | 15.8 |
令和3年度秋期 | 7,409 | 1,268 | 17.1 |
令和4年度秋期 | 8,445 | 1,486 | 17.6 |
[統計資料]
受験者・合格者平均年齢
平成30年度春期 | 平成31年度春期 | 令和2年度10月 | 令和3年度秋期 | 令和4年度秋期 | |
受験者平均年齢 | 34.8 | 35.3 | 35.3 | 35.0 | 35.1 |
合格者平均年齢 | 31.9 | 31.3 | 30.9 | 35.4 | 31.0 |
[平均年齢]
合格率は14~17%で推移しており、合格者平均年齢が30代前半であることからも、IT業界や現場での豊富な実務経験から得た確かな知識と経験もしくは、それに相当する学習時間がなければ容易には突破できない試験だということが読み取れ、高難易度であることが分かりますね。
そして、実務経験者でも試験対策を怠っては合格が厳しいのもまた事実です。
実務経験者でも合格に必要な勉強時間の目安は200時間といわれています。自分に必要な勉強時間と一日当たりに割ける時間を考慮して計画的に学習を進めましょう。
データベーススペシャリスト試験の概要
ここからは、実際に受験を考えている人に向け、試験の概要について説明していきます。
試験日程・実施場所・受験料・受験資格
試験日程 | 年一回秋期(10月の第3日曜日) ※平成31年度まで春期実施 |
実施場所 | 全国主要56都市の市内または周辺に設けられた試験会場 |
受験料 | 7,500円 |
受験資格 | 特になし |
試験日程
データベーススペシャリスト試験は秋期に実施されています。受験できるのは年に1日だけなので注意が必要です。例年10月の第3日曜日に実施されていますが、今年(令和5年度)の実施日は10月8日となります。受験申し込みは7月上旬~8月初めあたりです。IPAでは、配信メールで試験の受付開始情報をお知らせするサービスも行っています。登録をすれば、申込み忘れも防げるのでぜひご活用ください。
実施場所
試験会場は、会場の定員数の関係で希望する試験地で受験できない可能性があります。余裕をもって申し込みましょう。
受験資格
受験するのに満たす必要のある資格などは特にありませんが、試験を主催するIPAは受験者の対象者像を以下のように定めています。
「高度IT人材として確立した専門分野をもち、データベースに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者」
誰でも受験は可能ですが、実力を証明する類の試験であるため、実務経験を積んだエンジニアが自己研磨を目的として受験する場合やこれからの実務経験に活かすという目的をもって試験に臨むのが望ましいでしょう。決して、机上の空論にならないことが重要です。
試験時間・出題形式・出題数・解答数
午前Ⅰ | 午前Ⅱ | 午後Ⅰ | 午後Ⅱ | |
試験時間 | 9:30~10:20 (50分) | 10:50~11:30 (40分) | 12:30~14:00 (90分) | 14:30~16:30 (120分) |
出題形式 | 多肢選択式 (四肢択一) | 多肢選択式 (四肢択一) | 記述式 | 記述式 |
出題数 | 30問 | 25問 | 3問 | 2問 |
解答数 | 30問 | 25問 | 2問 | 1問 |
データベーススペシャリスト試験は4つの試験で構成されています。
午前試験は、多肢選択式(四肢択一)でIT産業全般や関連技術に関して出題されるのに対し、午前試験は、記述式となっており、実務上で直面するような事例が長文で出題されます。
高度試験には珍しく論述試験がないですが、午後問題は、データベースに関する高度で専門的な知識が問われるのに加え、短時間で長文読解する必要があるため高難易度となっています。
試験範囲
◎は重視点分野を指しています。
午前Ⅰ試験(共通問題):IT産業全般に関する基本的な知識が問われる
午前Ⅰ試験は高度試験で共通の問題となっており、IT産業全般に関して幅広く出題され、基本的な知識が問われます。問題の難易度も応用情報技術者試験と同じレベル3程度で、近年は同年に行われる応用情報技術者試験からの流用が増えています。
◆テクノロジ系
→基礎理論、コンピュータシステム、技術要素、セキュリティ◎、開発技術
◆マネジメント系
→プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント
◆ストラテジ系
→システム戦略、経営戦略、企業と法務
午前Ⅱ試験:データベースを中心とした技術的な出題
午前Ⅰ試験と同様に選択式ですが、出題範囲がテクノロジ系に絞られ、実装技術に関する知識と理解度も問わるなど、午前Ⅰ試験よりも専門的な知識を深堀して問われます。なかでも、データベースに関する出題が大半を占めるため、重点的に対策する必要があります。
◆テクノロジ系
コンピュータシステム(コンピュータ構成要素○3、システム構成要素○3)
技術要素(データベース◎4、セキュリティ◎4)
開発技術(システム開発技術○3、ソフトウェア開発管理技術○3)
午後試験
午後試験では、午前試験と異なり、実践的な内容が問われます。
- データベースシステムの企画・要件定義・設計・構築に関すること
- データベースシステムの運用・保守に関すること
- データベース技術に関すること
詳細については以下の試験要綱・シラバスを参照してください。
[試験要綱]
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_13download/youkou_ver5_1_henkou.pdf
[シラバス]
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_13download/syllabus_db_ver4_0.pdf
採点方式・配点・合格基準
データベーススペシャリスト試験は午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの4つの試験に分かれており、すべて100点満点の素点方式で採点されます。合格基準点はその6割にあたる60点となっており、すべての試験で60点以上をとれれば合格となります。
試験区分ごとの配点は、午前Ⅰが30問であるため、1問あたり3,4点、午前Ⅱは25点なので1問あたり4点、午後Ⅰ試験は大問3つのうち2つを選択して解答するため大問1つあたり50点、午後Ⅱ試験は同じく大問2つのうち1つを選ぶ方式で、大問1つで100点となっています。
各試験の得点が基準点に達しない場合は、その後に行われた試験の採点はされずに不合格となります。
データベーススペシャリスト試験を取得するメリットは?
難易度が高く、取得が難しいデータベーススペシャリスト試験ですが、それだけに取得することで得られるメリットは非常に大きいです。
自身の市場価値を高められる
データベースエンジニアやデータアナリスト、データサイエンティストなど、データベース関連の職種はいずれも高い需要があります。資格を取得することでビッグデータの活用をリードする人材として高い評価を受け、自然と自身の市場価値を大きく押し上げることができるでしょう。データベース関連の資格にはベンダー資格もありますが、対象となる製品が限られてしまいます。データベーススペシャリスト試験であれば、データベースを体系的に学ぶことができ、汎用性が高いため、さまざまな関連ソフトも扱いやすくなるなど、活躍が期待できます。
実力を証明する指標になる
データベーススペシャリスト試験を取得することで、データ分析やデータベース開発などといったデータベースに関する高度な技能を有していると客観的に示すことができます。これにより、好条件での転職が叶ったりと、キャリアアップにも役立つでしょう。
資格手当や報奨金がもらえる
企業によっては、合格者に対して、資格手当や一時金などの報奨金を付与する制度を設けています。相場としては資格手当が10,000円〜20,000円/月、報奨金はおよそ120,000円です。
試験の一部免除が受けられる
ほかの資格試験で一部免除制度が受けられます。具体的には以下のようなものがあります。
- 中小企業診断士試験
第1次試験科目の一部免除 - 弁理士試験
論文式筆記試験選択科目(理工Ⅴ(情報))の免除 - 技術士試験
第一次試験の専門科目(情報工学部門)の免除 - ITコーディネータ(ITC)試験
ITコーディネータ試験の一部が免除される専門スキル特別認定試験の受験が可能
データベーススペシャリスト試験に合格するコツは?
傾向・対策・合格のコツ
午前Ⅰ試験
午前Ⅰ試験の問題は、ほとんど同時期に行われる応用情報技術者試験の午前試験からの流用が大半を占めます。午前I試験や応用情報技術者試験の過去問をひたすら解き、間違えた箇所を復習して覚えなおすという学習方法がおすすめです。
過去問は公式ページに掲載されています。
[過去問題]
ちなみに、受験者の半数以上が、午前Ⅰ試験を免除しています。
以下に該当する人であれば、この免除制度が2 年間有効です。
(1)応用情報技術者試験に合格する。
(2)いずれかの高度試験又は支援士試験に合格する。
(3)いずれかの高度試験又は支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績を得る。
ITストラテジスト試験は4つの試験があり、長丁場になるため、少しでも負担を軽減するよう上記免除制度の該当者には積極的な利用をおすすめします。
午前Ⅱ試験
午前II試験は、午前I試験と同様に多肢選択式の問題となっていますが、午前I試験よりも出題範囲が絞られ、より深い、専門的な知識が問われます。ただ、出題範囲が狭いため、対策はしやすいでしょう。
特に、出題範囲で示したとおり、データベース分野、セキュリティ分野が重点分野になっており、出題数も多いため、重点的に学習する必要があります。
過去問演習の際に、間違えた問題やよくわかっていないと感じた問題はそのままにせず、きちんと問題や選択肢の意味を理解するようにしましょう。
また、過去問演習に加え、最新事例に関する問題も出題されるため、情報収集を欠かさず行いましょう。
午後Ⅰ試験
午後Ⅰ試験は90分間で3つの大問から2問を選んで記述式で解答する問題です。実際の業務で扱うような内容になっており、問題文が非常に長文で、内容を瞬時に理解するなかなか難しいです。そのため、先に設問を読み、問われている内容を把握するのがいいでしょう。
午後I試験は、データベースの設計構築や保守、SQLに関する問題など実用的な技術に関する問題が出題される傾向があるため、試験問題のパターンを学んでおくのがおすすめです。また、SQLについてはデータ操作に関する基本構文を抑えておきましょう。
まずは、短時間で正しく読解する練習を行い、そして短い文字数で簡潔に解答する練習、それから演習量をこなして解答スピードを上げていくというのがおすすめです。
午後Ⅱ試験
午後Ⅱ試験は2時間で、2つの大問から1問を選んで記述式で解答する問題です。
午後Ⅱ試験は、午後Ⅰ試験と同様に実例に基づいた問題で、実務対応能力が問われる記述問題となっています。データベースのシステム構成を短時間で理解しなくてはならないため、時間配分を意識する必要があります。はじめに設問を確認してから問題文を読むのがおすすめです。
まとめ
データベーススペシャリスト試験は、IT資格のなかでも高難度資格の一つです。
しかし、その分取得することで得られる社会的な評価は高く、キャリアアップにも非常に有用な資格です。
上級エンジニアとして活躍していくには、ぜひ取っておきたい資格といえます。合格にはやはり、学習時間の確保が必須です。
受験を考えている人は、一日でどれくらいの時間を試験勉強に充てられるか、また、自身の知識レベルや経験値からどの程度の勉強時間を確保すべきかを考慮し、試験当日までに必要な期間を逆算して、学習を開始しましょう。
過去問を本番と同じように解くことで、時間配分の練習や、頻出分野の把握、苦手分野の発見などができるため、過去問を重点的に対策するのがおすすめです。
【おまけ】
2022年12月、データベーススペシャリスト試験に(受験当時)14歳が合格し、最年少記録を更新したと本試験を主宰するIPAが発表しました。
データベースに関する高度で専門的な知識のほかにも読解力や論理的思考が身についていないと合格が難しい試験であるため、世間から称賛の声が上がっています。
最年少記録を更新したものさんのインタビュー記事「https://type.jp/et/feature/21602/」
ものさんは小学校2~3年時に「Scratch」を始めたことが、プログラミングに目覚めたきっかけになったそうです。
Scratchは、小中学生向けの教育ツールとして開発されたビジュアルプログラミング言語です。
▼Scratchについて知りたい方はこちら
Scratchとは?できることや特徴、人気のワケを解説
データベーススペシャリスト試験の勉強方法は?
書籍やインターネットで学習する方法があります。昨今では、YouTubeなどの動画サイトやエンジニアのコミュニティサイトなども充実していて多くの情報が手に入ります。
そして、より効率的に知識・スキルを習得するには、知識をつけながら実際に手を動かしてみるなど、インプットとアウトプットを繰り返していくことが重要です。特に独学の場合は、有識者に質問ができたりフィードバックをもらえるような環境があると、理解度が深まるでしょう。
ただ、データベーススペシャリスト試験に限らず、ITスキルを身につける際、どうしても課題にぶつかってしまうことはありますよね。特に独学だと、わからない部分をプロに質問できる機会を確保しにくく、モチベーションが続きにくいという側面があります。独学でモチベーションを維持する自信がない人にはプログラミングスクールという手もあります。費用は掛かりますが、その分スキルを身につけやすいです。しっかりと知識・スキルを習得して実践に活かしたいという人はプログラミングスクールがおすすめです。
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