システム監査技術者試験とは?難易度やメリット、合格のコツを解説

  • 2023.10.18
       
システム監査技術者試験とは?難易度やメリット、合格のコツを解説

ITが急速に普及し、便利な世の中になりましたが、同時に、情報システムや組込みシステムに関するトラブルもしばしば起こっています。そのような事態を回避し、情報システムの安全性を高める役割を担うシステム監査技術者の需要が年々高まり、その能力を証明する資格「システム監査技術者試験」も注目されています。本記事では昨今需要の高まる「システム監査技術者試験」の概要や難易度、試験対策について解説します。

システム監査技術者試験とは?

システム監査技術者試験は、経済産業省が認定する国家試験で、情報システムや組込みシステムに関するリスクの分析・評価、改善のサポートを行うシステム監査技術者に必要な知識や技能を証明する資格です。

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システム監査技術者の役割は?

システム監査技術者とは、情報システムや組込みシステムなどに関する幅広く深い知識をもち、監査対象から独立した立場でエンジニアとしての観点から「経営方針に対してシステムが有効に機能しているのか」「どんなリスクがあるか」などを分析、評価する人材のことです。また、必要に応じて改善のサポートを行うことで、企業・組織でシステムの適切かつ有効な活用を促し、目標達成に寄与する役割があります。

システム監査技術者は医師や弁護士のように国家資格が必要な独占業務ではないですが、システム監査技術者試験の資格保持者が従事する場合が多いです。システム監査技術者試験の試験勉強を通じて、システム監査に関して体系的かつ専門的に学べるため、実際の業務に応用しやすく、監査人や情報システム責任者などを目指す人向けの資格となっています。

試験を主催するIPAでも最難関に区分されるなど、試験の難易度こそ高いですが、その分、取得することで高度な知識やスキルの証明となり、キャリアアップや好条件での転職に有利にはたらくなど、取得するメリットが多い資格です。

規制の強化でシステム監査の需要増
昨今、システムの運用にあたり、順守すべき法律などが増えたことで、システム監査がより重要視されるようになったことで、システム監査技術者の需要も高まりました。
単にエンジニアとしての知識や技能だけでなく、監査に対応できるなど、幅広く深い知識を持つシステム監査技術者が求められています。

需要の高さから平均年収も高水準
このように需要の高いシステム監査技術者の平均年収は650~700万円と、ほかのエンジニアと比べても比較的高めの水準となっています。もちろん、個人のスキルや経験、企業規模によっても異なりますが、全体的に好待遇な印象を受けます。

システム監査技術者試験の概要

試験スケジュール・受験料・実施場所・受験資格

試験日程年一回秋期(10月)
※平成31年度まで春期実施
実施場所全国主要56都市の市内または周辺に設けられた試験会場
受験料7,500円
受験資格特になし

試験日程
システム監査技術者試験は秋期に実施されています。受験できるのは年に1日だけなので注意が必要です。例年10月の第3日曜日に実施されますが、今年(令和5年度)の実施日は10月8日となります。

申込受付期間
受験申し込みは7月上旬~8月初めあたりです。今年の受験を考えている人は、その年の7月頃に公式サイトをチェックしておきましょう。

うっかり申し込みを忘れてしまいそうという人に朗報です。IPAでは、配信メールで試験の受付開始情報をお知らせするサービスも行っています。登録をすれば、申込み忘れも防げるのでぜひご活用ください。

受験手数料
受験料は7,500円(税込)です。

実施場所
試験は全国主要56都市の市内または周辺に設けられた試験会場で実施されます。試験会場は、会場の定員数の関係で希望する試験地で受験できない可能性があります。余裕をもって申し込みましょう。

受験資格
受験するのに満たす必要のある資格などは特にありません。

誰でも受験は可能ですが、実力を証明する類の試験であるため、実務経験を積んだエンジニアが自己研磨を目的として受験する場合やこれからの実務経験に活かすという目的をもって試験に臨むのが望ましいでしょう。決して、机上の空論にならないことが重要です。

試験時間・出題形式・出題数・解答数※変更点記載

 午前Ⅰ午前Ⅱ午後Ⅰ午後Ⅱ
試験時間9:30~10:20
(50分)
10:50~11:30
(40分)
12:30~14:00
(90分)
14:30~16:30
(120分)
出題形式多肢選択式
(四肢択一)
多肢選択式
(四肢択一)
記述式論述式
出題数30問25問3問2問
解答数30問25問2問1問

試験時間
上記のように、システム監査技術者試験は4つの試験で構成され、すべて同日に実施されます。

出題形式
午前試験は、多肢選択式(四肢択一)でIT産業全般や関連技術に関する知識が問われるのに対し、午後Ⅰ試験は記述式、午後Ⅱ試験は論述式となっており、実務上で直面するような事例が長文で出題されます。

出題範囲

▼午前Ⅰ試験
◎は重視点分野を指しています。
◆テクノロジ系
→基礎理論、コンピュータシステム、技術要素、セキュリティ◎、開発技術
◆マネジメント系
→プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント
◆ストラテジ系
→システム戦略、経営戦略、企業と法務

▼午前Ⅱ試験
◆テクノロジ系
→技術要素
・データベース
・ネットワーク
・セキュリティ◎
→開発技術
・システム開発技術

◆マネジメント系
→サービスマネジメント
・サービスマネジメント
・システム監査◎

◆ストラテジ系
→経営戦略
・経営戦略マネジメント
→企業と法務
・企業活動
・法務◎

▼午後試験
1 情報システム・組込みシステム・通信ネットワークに関すること
2 システム監査の実践に関すること
3 システム監査人の行為規範に関すること
4 システム監査関連法規に関すること

詳細については以下の試験要綱・シラバスを参照してください。
[試験要綱]
[シラバス]

採点方式・配点・合格基準

システム監査技術者試験は素点方式で採点され、午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの各試験の得点がすべて基準点以上の場合に合格となります。
試験区分ごとの配点は、午前Ⅰが30問であるため、1問あたり3.4点、午前Ⅱは25点なので1問あたり4点、午後Ⅰ試験は大問のなかにいくつか設問がありますが大問1問で50点、午後Ⅱ試験はA~Dの評価ランクによるものとなるため、配点割合はありません。

合格基準としては、午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ試験が100点満点中60点以上、午後Ⅱ(論述式)試験では配点割合はなく、評価ランクがA~Dのうち、ランクAのみが合格となります。

各試験の得点が基準点に達しない場合は、その後に行われた試験の採点はされずに不合格となります。

システム監査技術者試験の難易度は?

[試験区分]

難易度が高いと言われるシステム監査技術者試験ですが、実際にはどうなのか見ていきましょう。

試験区分
試験を実施するIPAではシステム監査技術者試験の対象者像を以下のように想定しています。

「高度IT人材として確立した専門分野をもち、監査対象から独立した立場で、情報システムや組込みシステムを総合的に点検・評価・検証して、監査報告の利用者に情報システムのガバナンス、マネジメント、コントロールの適切性などに対する保証を与える、又は改善のための助言を行う者」
参照:https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/au.html

また、システム監査技術者に求められる能力や担う役割から、試験の難易度4段階のうち、その最上位にあたるレベルを4と設定しています。

各レベルの定義

では、次に、合格率・合格者平均年齢について見ていきましょう。

合格率・合格者平均年齢

以下の表は、直近5回分の受験者数・合格者数・合格率・合格者平均年齢を表した表です。

 受験者数合格者数合格率(%)
平成30年度春期2,84140814.4
平成31年度春期2,87942114.6
令和2年度10月1,70226015.3
令和3年度秋期1,87730116.0
令和4年度秋期1,97231315.9

[統計資料]

そして、こちらは受験者・合格者平均年齢を表した表です。

 平成30年度春期平成31年度春期令和2年度10月令和3年度秋期令和4年度秋期
受験者平均年齢43.643.744.144.444.8
合格者平均年齢41.442.241.242.141.7

[平均年齢]

合格率は10%代半ばで推移しており、合格者平均年齢が40代前半であることからも、IT業界や現場での豊富な実務経験から得た確かな知識と経験もしくは、それに相当する学習時間がなければ容易には突破できない試験だということが読み取れ、高難易度であることが分かります。

そして、実務経験者でも試験対策を怠っては合格が厳しいのもまた事実です。
実務経験で得た知識があっても、勉強時間を確保しなければ合格は難しいといえます。
受験を考えている人は、自身の知識レベルからどの程度の勉強時間を確保すべきか、一日に学習に充てられる時間を考慮し、試験当日から逆算して計画的に学習を開始しましょう。過去問を本番と同じように解くことで、時間配分の練習や、頻出分野の把握、苦手分野の発見などができるため、過去問を重点的に対策するのがおすすめです。

試験傾向・対策・合格のコツ

■システム監査技術者試験の傾向

システム監査技術者試験は、情報システムの適切な活用を促すことで企業の経営目標の達成に貢献する役割があるため、単にエンジニアとしての知識や技能だけではなく、コンサルタントとしての知識や技能を問う問題が出題されます。

午前試験は、四肢択一式でIT技術全般や関連技術に関する知識が問われるのに対して、午後試験は、記述式と論述式で実務の開発現場で直面するような事例を取り上げたシナリオ問題が長文で出題され、システム監査技術者としての技能が問われます。

▼4試験に共通する勉強法

今回から試験内容が大きく変わるためなんとも断言しづらいところはありますが、過去問を中心にインプットとアウトプットを反復的に繰り返すことが重要です。

まず参考書などで基礎知識をインプットしましょう。全体像を掴むと学習がスムーズに進みます。

基礎知識が固まってきたら、次はアウトプットを行います。アウトプットでは問題集や過去問を解いていきましょう。演習を通して問題の傾向や形式を把握し、問題に慣れるだけでなく、自身の弱点にも気づくことができます。

■午前Ⅰ試験 (共通問題):IT技術全般に関する基本的な知識が問われる

午前Ⅰ試験は高度試験で共通の問題となっており、IT技術全般に関して幅広く出題され、基本的な知識が問われます。

最近の出題傾向として、テクノロジ系 17問 (57%)、マネジメント系 5問 (17%)、ストラテジ系 8問 (26%)という出題比率で、そのほとんど同時期に行われる応用情報技術者試験の午前試験からの流用が大半を占めます。問題の種類としては用語問題、文章問題、計算問題、考察問題が出題されますが、考察問題が増えています。

▼午前Ⅰ試験の勉強法

午前I試験や応用情報技術者試験の過去問をひたすら解き、間違えた箇所を復習して覚えなおすという学習方法がおすすめです。

過去問は公式ページに掲載されています。

[過去問題]

ちなみに、受験者の半数以上が、午前Ⅰ試験を免除しています。

以下に該当する人であれば、この免除制度が2年間有効です。

(1)応用情報技術者試験に合格する。
(2)いずれかの高度試験又は支援士試験に合格する。
(3)いずれかの高度試験又は支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績を得る。

システム監査技術者試験は4つの試験があり、長丁場になるため、少しでも負担を軽減するよう上記免除制度の該当者には積極的な利用をおすすめします。

■午前Ⅱ試験:システム監査関連の技術的な出題

午前II試験は、午前I試験と同様に多肢選択式の問題となっていますが、午前I試験よりも出題範囲が絞られ、より深い、専門的な知識が問われます。ただ、出題範囲が狭いため、対策はしやすいでしょう。

▼午前Ⅱ試験の勉強法

重点分野となっているシステム監査関連の出題が多いため、重点的に対策する必要があります。過去問演習の際に、間違えた問題やよくわかっていないと感じた問題はそのままにせず、きちんと問題や選択肢の意味を理解するようにしましょう。

また、過去問演習に加え、最新事例に関する問題も出題されるため、情報収集を欠かさず行いましょう。

■午後Ⅰ試験:記述式の長文読解問題

午後Ⅰ試験は90分間で3つの大問から2問を選んで記述式問題と語句の穴埋め問題で解答します。実際の業務で扱うようなシナリオ問題で、問題文から潜在リスクの要因を見つけ出し、リスクに対してとるべき行動などについてシステム監査基準を基に答えていく問題になっています。昨今、設問が長くなっている傾向にあり、短時間で長文読解する必要があるため難易度が高まっています。

▼午後Ⅰ試験の勉強法

午後Ⅰ試験は90分間で2つの大問から1問を選んで記述式で解答する問題です。ただ、問題文が非常に長文で、内容を瞬時に理解するなかなか難しいです。そのため、先に設問を読み、問われている内容を把握するのがいいでしょう。

出題テーマとしては出題領域が広いため、守備範囲を広げておくと良いでしょう。また、マネジメントの要素を多く含んだ試験であるため、マネジメント視点を含んでの解答が求められることもあります。そのため、リスクへの対処方法は技術的なものとは限らないというところに注意が必要です。企業運営に関する知識をつけておきましょう。

問題文にヒントが散りばめられていることが多く、解答例も問題文にある単語をそのまま使用したものが多くあるため、しっかり設問を読み、そこから考察することを意識し、出題者側の意図を読みながら解答することが重要です。

設問に対して簡潔にまとめて解答する能力が求められます。まずは短時間で正しく読解する練習を行い、そして短い文字数で簡潔に解答する練習、それから演習量をこなして解答スピードを上げていくというのがおすすめです。また、最新の技術動向もキャリアアップしておく必要があります。

■午後Ⅱ試験:論述式

午後Ⅱ試験は2時間で、3つの大問から1問を選んで特定のテーマに関して論述式で解答していく問題です。午後Ⅰ試験と同様に実例に基づいたシナリオ問題で、実務対応能力が問われる論述式の問題となっています。設問形式はほとんど決まっていて以下のような構成になっています。

問1 システムの概要の説明
問2 リスクの列挙、とるべき対処の論述
問3 監査手続の論述

▼午後Ⅱ試験の勉強法

設問ごとに字数制限が設けられており、かなり長い文章を書かなくてはなりません。

また、自分の考えや経験などを他者にわかりやすく伝える必要もあります。

さらに、こういった知識や文章構成力に加えてシステム監査技術者としての立場を意識した論述ができているかという点も意識しなくてはなりません。

問題文にヒントが散りばめられていることが多く、解答の手掛かりになることも多いため、しっかり設問を読み、そこから考察することを意識しましょう。

まずは、文章を書く構成力を身につけることです。それぞれの設問に対する内容を箇条書きで書き出し、そこから肉付けしていくのがコツです。

問題文のボリュームも大きく、設問も複数あるため、過去問演習も時間を意識しながら取り組みましょう。

事例やテーマに技術的な共通点はなく、監査未経験の受験者にとって、実例を出すことは困難を極めるでしょう。テーマごとに別々のシステムを当てはめるのは大変なので、いくつか念頭に入れて当てはめていくのがおすすめです。それに対して、監査に関する解答範囲は広くありません。

システム監査技術者試験を取得するメリットは?

難易度が高く、取得が難しいシステム監査技術者試験ですが、それだけに取得することで得られるメリットは非常に大きいです。

体系的に学べる

システム監査技術者試験の資格勉強を通じて、システム監査に関する知識や技能を体系的かつ効率よく学び、習得できます。

業務のなかでその都度習得していくのは大変なので、システム監査技術者試験は知識の習得に最適といえます。

自身の市場価値を高められる
システム監査技術者試験を通して組込みシステムを体系的に学べるため、資格を取得することで高い評価を受け、自然と自身の市場価値を大きく押し上げることができるでしょう。

キャリアアップに有効
システム監査技術者試験を取得することで、組込みシステムに関する高度な技能を有していると客観的に示すことができます。これにより、開発現場ではチームを指揮する立場や重要なプロジェクトに任命させられたりと責任あるポジションを任される可能性が増える、また、転職においても、好条件での転職が叶ったりと、必然的にキャリアアップにも有効にはたらきます。

資格手当や報奨金がもらえる場合がある
企業によっては、合格者に対して、資格手当や一時金などの報奨金を付与する制度を設けています。相場としては資格手当が5,000円〜20,000円/月、報奨金はおよそ120,000円です。

試験の一部免除が受けられる
ほかの資格試験で一部免除制度が受けられます。具体的には以下のようなものがあります。

  • 中小企業診断士試験
    第1次試験科目の一部免除
  • 弁理士試験
    論文式筆記試験選択科目(理工Ⅴ(情報))の免除
  • 技術士試験
    第一次試験の専門科目(情報工学部門)の免除
  • ITコーディネータ(ITC)試験
    ITコーディネータ試験の一部が免除される専門スキル特別認定試験の受験が可能

まとめ

IT化が進む現代では、システム監査技術者の需要は今後も高まり続けていくことが予測されます。
システム監査技術者試験はシステム監査技術者としての高い専門知識や技能を証明できる有用な資格です。資格を取得することで、仕事の質を上げるほか、キャリアアップや幅広い分野での活躍も期待できます。システム監査技術者試験は将来性も高く、おすすめの資格です。

システム監査技術者試験の勉強方法は?

書籍やインターネットで学習する方法があります。昨今では、YouTubeなどの動画サイトやエンジニアのコミュニティサイトなども充実していて多くの情報が手に入ります。
そして、より効率的に知識・スキルを習得するには、知識をつけながら実際に手を動かしてみるなど、インプットとアウトプットを繰り返していくことが重要です。特に独学の場合は、有識者に質問ができたりフィードバックをもらえるような環境があると、理解度が深まるでしょう。

ただ、システム監査技術者試験に限らず、ITスキルを身につける際、どうしても課題にぶつかってしまうことはありますよね。特に独学だと、わからない部分をプロに質問できる機会を確保しにくく、モチベーションが続きにくいという側面があります。独学でモチベーションを維持する自信がない人にはプログラミングスクールという手もあります。費用は掛かりますが、その分スキルを身につけやすいです。しっかりと知識・スキルを習得して実践に活かしたいという人はプログラミングスクールがおすすめです。

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